慶応義塾大学法学部のFIT入試について ―帰国生大学入試についてvol. 273―

(2020年10月30日 12:25)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、高校を卒業するまでに海外の教育機関で学んだ経験のある人が受験することの多い慶應義塾大学の総合政策学部や環境情報学部のAO入試を取り上げました。この入試では、海外での学習成果が大学入学資格取得のための統一試験や英語運用能力試験の成績に反映されている場合、何らかの社会的な活動を積極的に行い、そこから大学で学びたいことを考え、それがこれら2つの学部のカリキュラムに合っていることが重要になります。受験を考えている人にはこれらの条件が揃えられるような形で準備を進めてもらえればと思います。

さて、今回はこの大学のAO入試の中で上で述べたような経歴を持つ人が受験することの多いもう一つの入試である法学部のFIT入試の特徴を説明します。

〇慶応義塾大学法学部のFIT入試
この大学の法学部では、法律学科が学生も教員も優秀な人が集まっているが法学系の学部・学科では一般的なカリキュラムを維持している一方で、最近、政治学科が受験生の間で人気があるようです。その背景に学生の知的成長を促すような新たに導入されたプログラムでもあるのかと思い、SOLのOBOGなどにどのような授業が行われているのか訊いてみることがあるのですが、そこで返って来る答えによればカリキュラムや授業のあり方は例年法律学科への転科をする人が多く出る以前からのものと変わらないようですし、内部進学者の間で人気がある理由も「単位を取るのが楽な割には就職がいい」ということであるようです。もちろん学生や教員で優秀な人が多くいることに間違いはないですが、少人数制の授業などを積極的に取り入れている早稲田大学政治経済学部の政治学科などと比べるとかなり見劣りがするような学習環境しか用意されていないことに受験を考えている人は注意すべきだと思います。

この入試には2つの方式があり、海外の高校を卒業した場合にはA方式で受験することになります。上で紹介したSFCのAO入試とは異なり、活動などの実績と志望理由の間に強い関連性が必ずしも求められている訳ではなく、特に来年度からは明確に「高い外国語運用能力があること」が出願資格の一つとなりますので、海外の高校での学びの中でそこで主に使われている言語を十分に習得し、大学入学資格を取得するための統一試験でよい成績を修めていれば、出願手続き時に提出する自己推薦書の内容に困ることはなくなると思われます(ただし、海外の環境に溶け込んでいたことをアピールできることを考えると、そこで行われている様々な活動に参加しておくことはプラスに働くでしょうし、そのような形で高校生活を送ることが志望理由を考える上で望ましいと考えられます)。

以前は論述試験に合わせてグループディスカッションと面接試験が実施されていたのですが、今年度は新型コロナウィルスの感染拡大に対応するために事前に小論文を提出した上で面接試験を受けるということになっていますし、来年度以降もグループディスカッションはなく、論述試験と面接試験のみが行われる予定です。論述試験では、法学や政治学で扱われる様々な問題に関わる文章が出題され、それが書かれた年代も多岐に渡りますので、まずは与えられた文章の内容が正確に理解できるように過去問の演習などを通じて古い文語体で綴られた文章にもふれる体験を蓄積するべきですし(小論文は少ない制限字数で書くものなので、これができれば合格に求められる答案は作成できると思われます)、近代から現代に至るまで日本社会が直面してきた状況に関する情報を十分にインプットしておくことが必要になります。面接試験では、この学部で自分が学びたいことを明確にした上で、それを選んだ理由やきっかけについての考察を深めておきましょう。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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