受験する大学や学部・学科の選び方について(6) ―帰国生大学入試についてvol. 251―

(2020年6月1日 17:15)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、2018年に経団連が公表した「高等教育に関するアンケート」の結果を踏まえて、現在の日本の企業が大学新卒者の採用活動においてどのような学部・学科で専門性を磨いてきたかということを(控えめに言って)多くの人が考えているほど重視している訳ではないようだということを述べました。このような状況に大きな変化がない限り、大学受験において志望する学部・学科は自分の学問的な関心に沿う形で選んでもよいと言えるかと思います。

多くの企業が採用する人の学問的な専門性を主な判断材料としているようではなさそうだということは、各大学のHPで閲覧できる卒業生の就職に関するデータでもわかります。例えば、中央大学が公表している2018年度に卒業した人の進路状況を見てみると、経済学部で学んだ人がそこで得た専門的な知識を最も活かすことができると考えられる金融・保険業界に進んだのは全体の18.9%であるのに対して、文学部を卒業した場合でも11.9%の人が同じ業界に就職しています(法政大学の場合だと、経済学部が22.9%、文学部が9.8%とその差がより大きなものになります)。

この2つの数字には大きな開きがあるようにも見えますが、文学部にはもともとそこで学べることに関連した、例えば教育や出版といった業界で職を得たいと考えていた人が一定数いるでしょうし(大学院に進学して研究者になる道を選択した人の割合も経済学部に比べると高いです)、金融・保険業界で働くには経済学や経営学を学んでおいた方が有利だと周りの人に言われて尻込みしてしまった人も少なくないと思われます。そのようなことを考えると、この数値の違いに大きな意味があるのかについては簡単に結論を出すことはできないはずで、製造業や卸・小売り業といったその他の業界で見られる数値の差(そもそも大きな違いがないものがほとんどですが)についても同じことが言えます(就職先の企業のリストには同じような知名度を持つものの名前が並んでいます)。

なお、卒業生全体に占める就職した人と就職できなかった人の割合を見ても、学部や学科で大きな違いはないという大学がほとんどです(上に挙げた中央大学の2018年度のデータでは経済学部が88.9%、文学部が85.1%)。このような大学が公表しているデータが実態に合致しているものであるとすれば(過去に、ある有名な大学で学外に公表されているデータと学内で閲覧できるものの内容が大きく違っていたという告発をOBOGから受けたことがあります)、入学する学部・学科で学べることによって就職活動を有利な立場に立って進められるか否かが決まるということはなさそうですので、進路選択をする際には世間一般で言われていることに束縛されずに、自分の学問的な関心がどこにあるのかということをじっくりと時間をかけて考えるのがよいと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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