受験する大学や学部・学科の選び方について(16) ―帰国生大学入試についてvol. 261―

(2020年8月7日 11:55)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、「大学で何を学びたいのか」について時間をかけて検討した結果、答えがある程度明確になってきたら、受験候補としている大学で実際にそれを学ぶことができるのかを確認した方がよいということを述べました。自分の学びたいことと大学が提供しているものがミスマッチな状態になっていると面接試験などで問題が生じる場合がありますので、大学がインターネットで公表している授業の概要をまとめたシラバスなどを受験する大学を決定するための材料として用いるべきだと思います。

さて、受験する大学や学部・学科の選び方について説明してきたここまでの記事は、今年度、日本の大学の帰国生入試やAO入試を受験する人を主な読者として想定した上で書いたものです。掲載を始めた4月の終わりは、例年であれば多くの受験生にとって海外で生活する時間がそれほど多く残っていない時期ですし、今年は世界各地での新型コロナウィルスの感染拡大があり、すでに日本に帰国しているというケースも多かったようなので、あえて言及することは避けていたのですが、「大学で何を学びたいのか」という問題について考える局面では、高校生活の中で参加してきたボランティアのような社会的な活動などの中で、重大な問題に直面している、もしくは文化的背景や生活の状況が自分とは大きく異なる人々と交流することが、18、19歳の人にとって大きな意味を持っているように思われます。

実際に、これまでSOLの帰国生大学受験セミナーに通った生徒にも、上で述べたような体験が大学で学びたいことを決める際の決め手となったという人が多くいます。例えばシングルマザーの家庭に自分が作ったお菓子を送るというボランティア活動をしていく中で、NPO団体の主催者からこのような家庭がどのような状況に置かれているのかということや、自分の活動がその状況の改善にどのように貢献しているのかということについて話を聞いてきたという日本の高校に編入した生徒がいましたが、彼女はこの体験から大学で現代の日本社会における子どもの貧困問題の解決には何が必要かというテーマについて学ぶことにしました。

また、カナダのブリティシュ・コロンビア州には、重度の肉体的、精神的障害を持った人でも彼ら自身が望むのであれば一人ひとりにアシスタントをつける形で通常の学校の授業への参加を保障するという制度があるそうです。この州の高校で授業を受けて来た生徒の中には、このような環境の中で何らかの障害を持った生徒たちと日常的にコミュニケーションを取ることによって、彼らが自分と変わらない夢や強い学習意欲を抱いていることを知り(日本の一般的な学校教育の現場は障害者を排除しているので、このようなことに強い印象を持つのは当然のことだと思います)、日本でもブリティッシュ・コロンビア州で見られるような障害者の社会参加をサポートする制度を導入できないのかということを考えるために政治学科への進学を決めた人もいますし、自分が当たり前だと思っていたこと全てを根底から考え直す必要があると考え哲学を学ぶことにした人もいます。

これまでの生徒を見ていると、上で述べたような例は枚挙にいとまがありません。それは、大人と比べた場合に十分な社会体験や広い人間関係を持っているとは言えない大学受験を控えた年頃の人にとって、本や新聞、映像メディアの流す情報に接するだけでは大学で様々なテーマについて研究が行われている意義について実感を持った形で理解することが難しかったのが、実際に現代社会の中で生きていく際に何らかの問題に直面する人や自分と状況や立場が異なる人と実際に交流する体験を蓄積することによってそのようなものが現実味を持つ形で眼前に迫って来るようになったと解釈することができると思います。

このような社会的な活動などでの体験の「大学で何を学びたいのか」を考える過程におけるインパクトを踏まえると、高校に在籍している間にボランティア活動などにできるだけ参加して、自分と違う生活状況などにある人と幅広く交流することが望ましいと考えられます。新型コロナウィルスの感染拡大が収束したら、IB DiplomaコースのCASやカナダの公立校のカリキュラムのように、高校でそのような活動に参加する機会を提供しているところではそれを積極的に活用するべきですし、そのようなプログラムがないところで学んでいる場合には、高校の教師に働きかけをしたり、インターネットで地元のボランティア団体などに連絡してみたり(多くの地域でこのような活動に関する情報を集めたサイトが存在するようです)することで、社会的な体験を蓄積できるような状況を確保できるようにした方がよいでしょう。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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