受験する大学や学部・学科の選び方について(2021年版)(6)―帰国生大学入試についてvol. 295―

(2021年4月23日 18:30)

こんにちは。SOLの余語です。
ここ3回の記事では、日本語を母語とする人が英語を主な使用言語とする大学で学ぶのが適当かどうかは慎重な判断を要する問題であるということを述べてきました。それには、専門的な学びをする中で大きな負担がかかることや、これから「知識基盤社会」化が進んでいく中で求められる能力を伸ばすことにつながるのか疑問が残ることが関係しています。自分の適性や将来像などを踏まえながら進路についての検討にしっかりと時間をかけるべきでしょう。

上のようなことを書いたからといって、僕は「日本語を母語としている人は全て日本の大学に行くべきだ」と考えている訳ではありません(実際にSOLの生徒で英語圏の大学に進学した人もいます)。これから大学に行く予定の人の中には、英語圏の大学だけで学べるテーマに強い関心を持っている、もしくは英語圏の社会で一生を過ごしたいといった英語で専門的な学びをすることに強いモチベーションを持っている人もいるでしょうし、そのための準備がしっかりできているという人もいると思います。

また、周りの大人の話を聞いたりインターネットで情報を集めたりする中で、日本の大学の教育体制がしっかりとしたものかということに不安を抱いているという人もいるかもしれません。ここ十年で海外の大学への進学が望ましいこととするトレンドが生まれた要因の一つは、英語を主要な国際言語とするグローバル化の進展ですが、日本の大学が「社会人になっていろいろな苦労をする前に4年間遊ぶためのレジャーランド」と社会的に評価されてきたにもかかわらず、それを払拭するための努力がなされていないところが目立つということも大きな役割を果たしてきました。

例えば、日本の(特に私立)大学の社会科学系学部でよく見られる大人数授業は、教員が一方的に話をし、それを学生が聴講するだけという形で展開しますが、このような形式での授業はそこで話されている内容に対する学生の反応を教師が把握することが難しいので、彼らが扱われているトピックを十分に理解できる形で授業を進めるのが難しいですし、一人ひとりの学生が抱いた疑問の全てに対応できるかにも疑問が残ります。また、やる気がない学生はただ参加すればよいといったことを考えても全ての学生の知的な成長を促すことが難しいと考えられるため、新たな授業形態を模索すべきだという声が以前から上がっていました。

この点、数年前に文部科学省が国立大学に対して教員養成課程や人文社会科学系の学部の縮小や再編のための計画を作成するよう指示したことで生じた議論の中で、このような指示が出たのには、国立大学が税金で運営されておりその費用対効果が短期的で把握しやすい(と少なくとも一部の政治家が考えた)理系の学部にリソースを集中すべきという考えがあるようですが、国立大学が文系の学部を維持することに対して「民業圧迫だ」という私立大学からの批判があったという指摘もあります。また、文系の学部の授業は大人数授業を実施することが実習を必要とする理系の学部に比べて容易であり、一人の教員が何百人もの学生を相手に授業ができるコストパフォーマンスが高いものだと私立大学では捉えられているという論考も目にしました。

もしこれが事実であるとすれば、多くの私立大学の文系学部は現在の授業のあり方を変えるつもりはないということになり、今後も学生の知的な能力を伸ばすという社会的な責務も果たせないように思います。ただし、日本の大学の中にも、国公立大学に加えて上智大学の人文科学系の学部や国際基督教大学(ICU)、慶應義塾大学の総合政策学部・環境情報学部のように以前から教員と学生のコミュニケーションが活発になりやすいような体制を採っているところはありますし、少子化や大学間の国際競争を意識してか、早稲田大学の政治経済学部や社会科学部、明治大学の政治経済学部のように少人数制の授業を導入したり、ゼミを早くから始めたりするようなところも出て来ています。

僕らは日頃からOBOGと話す機会が多く、学生の視点から見た大学の様子についても比較的情報を多く持っている方だと思います。自分が志望する大学や学部・学科が学生の教育に積極的な姿勢を持っているのかを確認したい人は「教育相談フォーム」などからご連絡ください。

<SOL教育相談フォーム>
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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