今から帰国生入試やAO入試に向けて準備すべきことについて(12) ―帰国生大学入試についてvol. 322―

(2022年5月27日 19:15)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、最近、大都市圏の大学が次々に設置している英語を主な使用言語とする9月入学プログラムが抱える問題の一つとして、英語でのコミュニケーションを日本語が母語になっている人を相手にスムーズに取ることができる水準にない、もしくは授業内容の中心が体験談で学問的な深まりがない日本人の教員が授業を担当していることを挙げました。先日、神戸大学の中屋敷均氏が9月入学プログラムを「おままごと」と評している文章を読みましたが、それには上のような事情が関連していると思われます。

さて、新型コロナウィルスの感染拡大によって日本経済の状況が悪化していることなどを受けて、日本企業もこれまでのような「メンバーシップ雇用」(企業内での配置転換を可能にするために、労働者を雇用する際に専門的な技量を求めないのが特徴の一つとされます)ではなく、新卒採用にこだわらず一つ一つの仕事に見合った労働者だけを雇用する「ジョブ型雇用」に転換すべきだという声が高まっています。企業の雇用のあり方を研究する学者が書いた文章を読む限り、欧米では以前から「ジョブ型雇用」が一般的で、よい待遇を受ける知的労働者になるには大学や大学院で学問的な知識や考え方を身に付ける必要があるようです。

大学生活に期待するものは人それぞれだと思いますが、このような状況で将来の生活を経済的に安定したものにするためには、大学で専門的な学びを深めていくことが重要になってくると思われます。この点、1月下旬にある大学の教授と外国人留学生が日本の大学でどのような生活を送っているかについて話す機会があり、その学部が専門領域としている学問を彼らが母語でどれくらい学んだ経験があるかによって授業で得られるものに大きな違いがあるという話を聞きました。大学院から留学してきた人は日本語運用能力に多少問題があっても授業にしっかりと参加ができる一方で、学部生の場合は学んだことの理解を深めるのが難しいと感じるケースが少なくないようです。

これは、母語でない言語を用いて学問的な用語や概念、思考のあり方について学ぶ時に、自分が細かなところまで理解ができる母語を通じて吸収したものが大きな役割を果たしていることを意味しているのでしょうが、日本の大学を卒業後に英語圏の大学や大学院に留学した人であれば同意できる点がある話なのではないかと思います(少なくとも、この教室の生徒の保護者は賛意を示してくれることが通常です)。このようなことを考えると、上で述べたような問題に直面しないで済む水準まで英語運用能力を伸ばすことができた一部の人を除いては、まずは母語である日本語で学問的なものにふれておくことが後々得るものが多くなるはずです。そして、そのような学びができるよりよい環境に帰国生入試やAO入試で入るために必要な成績をTOEFL iBTやIELTSといった英語運用能力試験で修められていないのだとすれば、SATの受験などに時間を費やすのではなく、その対策を優先して行うのがいいではないかと我々は考えています。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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