海外の大学への進学について(11) ―帰国生大学入試についてvol. 382―

(2024年4月6日 18:30)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、SOLの帰国生大学受験セミナーに、例年、英語圏の国の大学やコミュニティーカレッジを中退して日本の大学の帰国生入試や総合型選抜の受験準備をしている人がいるが、その中にはTOEFL iBTやIELTSのスコアを見る限り一定以上の英語運用能力を備えていると思われる上に、現地でも高い評価を受けている大学に在籍していた人もいるという話をしました。このような人でも学問的な思考や知識を第二言語である英語で習得していくのには負担を感じ、自分が何を学んでいるのかを見失うことがあるようです。

さて、ここまでの記事では、高校生や大学生といった専門性を身に付けるための基礎的な事項を学んでいる、もしくは学問を学び始めた段階にいる人の視点で、学びを深めていくこととその際に使われる言語の関係を考えるためにいくつかの事例を紹介してきました。それだけだと十分に材料が揃っているとは言えないと思う人もいるはずですので、今回はすでに一定以上の専門知を身に付け、多くの場合、(現時点では大学院に在籍していたり研究者になったりしてからというケースがほとんどだと思われますが)海外の大学で研究活動を行った経験がある大学の教員がこの問題についてどのように考えているかが推測できるような話を取り上げたいと思います。

このブログの「SOLからのお知らせ」というシリーズでは、現在、帰国生大学受験セミナーの「既卒生/2024年5月・6月卒業生コース」の特徴についての説明をしていますが、その一つに「帰国生入試や総合型選抜の面接試験についても生徒が受験するもの全てのサポートを2名の教師が行う」というものがあります。これを効果的なものにするために、僕らは一つ一つの試験が終わった後に、試験官からどのような質問がなされたのか、それに対する答えに彼ら・彼女らがどのような反応をしたり追加で何を訊いたりしてきたのかを生徒に質問するようにしており、後でそれを確認できるように面接の様子を記録するシートも作成してもらっています。

それによって分かるのが、特に英語を主な使用言語とする教育機関での在籍期間が長かったり英語運用能力試験や大学入学資格取得のための統一試験の成績がよかったりする受験生に面接試験の試験官がよくする質問の一つが「なぜ英語圏の国の大学ではなく日本の大学に進学することにしたのか」だということです。この質問に対してどのように対応するかについては、特定の大学や学部・学科で何が学べるかを十分に理解しておらず明確な答えを持っていない人が少なくないですが、僕らと面接試験の準備を進める中で「専門的な学びをその内容をしっかりと把握する形で行うには母語である日本語を通じての方がいいと考えた」という答えで落ち着くことがよくあります。

これに対しての大学の教員でもある試験官の反応がどのようなものだったかを試験後に訊くと、どのような学習面での経歴を持った人が相手でも「そうだよね」という納得の表情を浮かべるというのが通常で、その内容を掘り下げるような質問もされないそうです。日本の大学院では文献がオリジナルの言語で読むことが推奨されている一方で、これまで多くの研究書が日本語訳されていること(論文の執筆だけでなくそのような取り組みも研究者としての業績になります)も考え合わせると、少なくとも現時点では日本で学問研究に携わっている人にとって母語である日本語を用いた方が内容を深めることができるという実感があるのではないかと思われます。

現在、日本の大学は英語だけで授業をするプログラムなどを積極的に設置しているのは、面接試験での試験官の様子と矛盾しているような印象も受けますが、これは文部科学省の方針に従うように様々な形で促された結果だという声もあります。このような指摘が事実であれば、専門的な学びを深めていく際にどのような言語を使うのかについて慎重に考えることの重要性を上で見た事例が示しているように思われます。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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