帰国生入試の受験準備を行うのに最適な環境とは?vol.19 ―帰国生大学入試についてvol.88―

(2012年6月7日 14:20)

こんにちは。SOLの余語です。
「帰国生大学入試について」のvol. 86vol. 87では、英語学習における帰国生や海外生に見られる特徴的な傾向を踏まえた形で、「人数の多い環境」が受験準備を行う場として適切なものなのかということを検討しました。帰国生入試やAO入試に向けた準備では、小論文や外国語といった筆記試験の対策を行うことが最も重要なのは間違いありませんが、受験生活を実りあるものにするためには他にも大切なことがあります。今回の記事では、そのうち、受験する大学や学部・学科の選択において教師がどのようなサポートを行うべきなのかという観点から、「人数の多い環境」の妥当性について考えてみたいと思います。


僕らは以前からメール個人面談という形で、帰国生や海外生の大学受験に関する教育相談を受けてきていますが、その中で最も多いのが「受験校や学部・学科をどのように決めるべきか」というものです。このような質問が多く出て来る背景には、帰国生入試やAO入試には一般入試の多くにはない小論文試験があり、ある文章の持つ説得力などは本来的に得点化することが困難である(新聞や雑誌などで見かける書評で、そこで扱う文献が優れたものであるかということをスコアで示すものがほとんどないということを考えてみてください)ため、受験生が自分で合格可能性を判断することが難しいということがあります。また、学部や学科の選択に関しては、これから学ぶことの全般的な理解がないからこそ大学に進学するという受験生の立場を考えれば、それをどのように行えばいいのかということに関して迷いを感じる人がいても不思議ではありません。


このような局面において、受験生が将来に対して抱く不安を軽減し、日々の学習に集中できるような状況を整えたり、受験校などに関して4年間の大学生活やその後の人生が充実したものになる形で選択を行うことを可能にしたりするためには、小論文の教師が大きな役割を担わなければならないと僕らは考えています。それは、小論文の教師が生徒一人一人の答案にどれが誰のものであるかということを判別できる形で接することができ、どの生徒がどの大学に合格したかということまで継続的に追跡することのできる状況があれば、各大学の帰国生入試などで合格するために必要な論述力の程度に関して一定の経験知を獲得することができるからです。このような教師は、特に上智大学の大半の学科や横浜国立大学のように筆記試験が小論文試験のみという大学や小論文試験の出来を重視する大学を受験する人の合格可能性を判断する際に有効なサポートができることでしょう。


これに加えて、以前にも述べた通り、受験生の学問的な適性は、その人の書いた小論文答案を指導経験の豊富な蓄積がある小論文の教師が見れば、ある程度正確な判断ができるものです。大学入学後はそれぞれの学部・学科が取り扱う学問を専門的に学ぶことになるし、特に国家公務員や教員、弁護士、会計士といった資格を必要とする職業に就くことを希望している人にとって、出願時にした選択で大学卒業後の生活もある程度定まってしまうということもあり、受験する学部や学科について決断することを躊躇う人は多くいますが、個人の学問的適性に関する助言ができるという点で、小論文の教師は受験生の大きな力になることができると思います。


しかし、「帰国生大学入試について」のvol. 84でも述べた通り、小論文の授業を担当できる人を多く確保することは、少なくとも現在の日本社会では難しいことであり、生徒の多い塾や予備校には授業の内容に関する質問でさえ十分に対応してもらえないところもあると聞いています。このような状況では、小論文の教師が一人一人の生徒の進路選択に関与することは難しいはずで、その選択が合格可能性や生徒の学問的適性などを十分に考慮したものにならない可能性が生じてしまいます。この点でも、帰国生入試やAO入試などの受験準備をする際には、「人数の多い環境」(もしくは、生徒数に見合った数の小論文の教師が在籍していない環境)は避けるべきということになるでしょう。


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