受験する大学や学部・学科の選び方について(9) ―帰国生大学入試についてvol. 254―

(2020年6月19日 19:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、ICUや慶應義塾SFCの2つの学部のようなリベラルアーツ的なカリキュラムを採る大学や学部の中には、履修する授業や学問的に追究するテーマの選択について全てを学生任せにしてしまうところがあるため、大学入学前に「何を大学で学びたいか」ということをしっかりと考えておくべきだということを述べました。同じ問題に関して、帰国生入試やAO入試での合格可能性という観点から考察したその前の記事と合わせて読んでもらえればと思います。

さて、受験する大学や学部・学科を選ぶ時にまずは「大学で何を学びたいのか」について時間をかけて検討すべきだということを帰国生大学受験セミナーのガイダンスなどで生徒に話すと、そのようなことを考える時にどの時点までを射程に入れるべきかという質問(例えば、「大学生活の4年間確実に学ぶ意欲が持続しそうなものでなければならないか」、「大学入学後に変えてしまう可能性があってはならないか」といったものです)をされることがあります。我々は、そのような質問に「色々なものをじっくりと調べたり考えたりした段階で『今、最も強い関心を抱けそうだと思うもの』を選ぶべき」と答えています。

生徒の中には、この点について「何かを学びたい気持ちがどれくらい強ければいいのですか」という形で訊いてくる人もいます。このような人は多くのTVゲームで見られるように個人の何かに向かう気持ちを数値化できれば、容易に「4年間、好奇心を維持できそうな対象」を選別できると考えているのでしょうが、学力のようなものも偏差値のように一定のテストを受験したグループの中での個人の位置付けを示すことしかできない状況(小論文を書くための論述力などを数値で示すのが難しいことは大手の予備校の模試を見るとわかります)で、学問的な関心の強さのような人の感情に関わるものについて、数値を出すための前提になる全ての人に共通する基準を設定することはできないでしょう。

また、ほとんどの人は年齢がいくつになろうが、生活していく中でそれまでに体験したことがないことに直面することを通じて、考え方や好み、知的な好奇心を抱く対象などが大きく変化したという経験があると思います(例えば、僕は高校生の頃、将来、教育に関係する仕事をするであろうということは全く考えていませんでしたし、外国語の学習に関する関心を持っていることも大学院でドイツ語を学んだり塾で講師をしたりしている中で徐々にその自覚が強まっていきました)。そのため、社会経験が少ない18、19歳の人が例えば1、2年後に何に対して強い学習意欲を持っているかということは現時点で正確に予測するのは難しいことです(その判断を行う本人にとってはより困難なことでしょう)。

「志望理由書に書いたことと実際に研究していることが違うと問題になるのではないか」ということに不安を抱く人もいますが、実際に大学はある人がどのような授業でどれくらいの成績を修めているかについて追跡調査を行うケースがあるものの、それはどの入試制度で入った学生が最も高い学習意欲を持っているかを確認し、その結果を入試制度の設計に反映させるという目的で行っているものであり、具体的に一人一人の学生が何に学問的な関心を持っているかを問うものではありません。このようなことを考えても、「大学で何を学びたいのか」についての判断をする際に、自分なりに本や新聞で調べたり自分の体験などを踏まえてじっくりと考えたりした結果、「今、最も強く興味が引きつけられるものだと思えるもの」を選ぶのがよいと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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