受験する大学や学部・学科の選び方について(11) ―帰国生大学入試についてvol. 256―

(2020年7月5日 17:45)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、日本の大学の帰国生入試やAO入試を受験する場合、提出した小論文の答案が2、3日で返却され、授業での解説や答案につけられたコメントを踏まえて満足のいく答案ができるまで書き直すことができる環境で学んでいるのであれば、進学先として希望する大学や学部・学科の選択は受験する年の7月中旬頃までかかっても問題はないということを述べました。今年度に受験予定の人もあと2週間くらいの間しっかり考えてもらえればと思います。

さて、ここまで「大学で何を学びたいのか」ということを大学受験の準備をする間に自分なりに検討することの重要性について説明してきましたが、「自分なりに検討する」ということは必ずしも「受験生が自分一人でそのプロセスの全てをこなすこと」を意味する訳ではありません。18、19歳くらいの年齢の人には自分の学問的関心の向かう先を判断するために必要な人生経験や社会体験が十分にないのが一般的ですし、社会問題などに対する意識が高く日ごろから新聞や本を読むというような人でも、大学を受験するまでに取り込むことのできる情報は限定的なものになってしまうのは致し方のないことです。

そのため、自分の学問的関心を明確にするのに用いる材料の不足を補うために、大学や学部・学科に関する情報を提供するサービスなどに頼るという人も少なくないかと思うのですが、それ以外の方策として、例えばすでに大学を卒業し企業などで働いている、もしくは研究者として大学に在籍しているといった周りの大人に「大学で何を学んだか」、「大学で研究していることは何で、それをどのように選んだか」といった質問をしてみることが考えられます。また、様々な形で多くの社会体験を蓄積している人に「現代社会において生きていく中で最も重要な社会的問題とは何だと考えるか」ということを訊いてみるというのもいいかもしれません。

この点、大学を受験する際の進路決定について大きな役割を果たすことが期待されるのが「反省的実践家としての教師」です。僕はこの概念を大学の教員養成課程で受けた授業の中で知ったのですが、例えば授業を行う中で一人ひとりの生徒の学力や性格などの理解やそれまでの指導経験、科学的な知見に基づいて立てた「どのような形で授業をするのが望ましいのか」ということについての仮説に従って授業を実施し、それに対する生徒の反応や授業内容についての理解の深まり方を省察した上で「より良い授業のあり方」を模索し、その結果を次の授業に反映させていくプロセスを繰り返すというような形で生徒に向き合う教師のあり方を意味しています。

このような姿勢を持つ教師の存在は帰国生入試やAO入試を受験する人の進路決定においても重要な意味を持つはずです(実際に僕が大学で受けた授業の中では生徒に対する進路指導の場面が具体例として取り上げられていました)。例えば、SOLのように、教師が授業における全ての生徒の反応を把握できる少人数制という環境の中で、小論文などの授業を担当するだけでなく、生徒から提出された答案を添削し(小論文として書かれたものの中には生徒それぞれがものを考える時に大切にしている視点などが示されることが多くあります)、さらに受験する大学や学部・学科に関する相談にも対応する中で「反省的実践家」としての意識を持った教師が周りにいれば、受験生が自分の学問的な関心を持てそうなものを絞り込んでいく過程において、一人ひとりが将来に対する迷いを最小限なものにでき、受験準備に全力を傾けられるような判断をすることの手助けとなるようなアドバイスなどを得られると思います。

※上で述べたような環境や教師の職務のあり方は、少なくとも大学受験生の受験準備に関わるプロセスの全てを分業化し、授業や答案の添削、進路指導に異なる担当者を配置している大手の予備校や塾では見られないものです(テストの結果でクラス分けを行うところでは、東京大学や京都大学のような難関国立大学に合格する可能性がある生徒にのみ手厚くサポートを行うという話を聞いています)。そこでは授業を担当する人などが「反省的実践家としての教師」という意識を持っていたとしても、実際にそのような役割を果たすことは難しいと思われます。

※SOLの生徒やその保護者はOBOGが数多く教室にやって来ることに驚くのですが、僕らは彼らから得た大学や学部・学科に関する情報や授業などに関する評価なども「反省的実践家としての教師」として授業や進路指導に携わっていく際の材料として活用しています。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

トップへ戻る