今から帰国生入試やAO入試に向けて準備すべきことについて(9) ―帰国生大学入試についてvol. 319―

(2022年4月29日 19:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、この時期に帰国生入試やAO入試の受験に向けた準備の一つとして、大学入学資格を取得するための統一試験などの成績を上げるための取り組みを挙げました。慶應義塾大学や横浜国立大学経済学部、東京大学、京都大学など一部の大学ではこれが帰国生入試で合格できるかどうかにつながってきますので、これらの大学を受ける人は高校での学習や統一試験の対策を行うべきでしょう。

ただし、上で挙げたような大学がSATの受験を求めている教育制度(例えば、カナダや中国)のカリキュラムを採用する高校を卒業する予定で、外国語運用能力試験の成績が十分に伸びていない場合には、TOEFL iBTやIELTSなどで帰国生入試やAO入試の受験でよりよい成果を出すのに必要な水準を上回ることを優先すべきです。個別面談などをしていると、TOEFL iBTで100、IELTSで7.0を取るのにはまだ多くの学習が必要になる段階で、どうしても慶應義塾大学に入学したいからSATの対策をしていると言う人がいます(TOEFL iBT80台前半、IELTS6.0といった水準でも少なくありません)。

また、早くに進学先を決めてしまいたい、もしくは小論文試験の対策を行いたくないといった理由から早稲田大学政治経済学部のEDESSAや上智大学国際教養学部(FLA)などに9月入学をしたいと考えて、上で挙げたケースと同じような状況になっている人もいます。しかし、実際にSATの対策をやったことがある人なら分かると思うのですが、数年前からReading Testなどの難度が下がったものの、そこで使われる語彙にはTOEFL iBTやIELTSの対策では見かけないようなものが多くありますし、文の構造がより複雑なものを目にすることも頻繁にあります。また、Writing and Language Testで出題される文法項目なども、単に英語運用能力試験の成績を上げたいのであれば、確認する必要のないものが少なくないと思います。

何かを学ぶ際に「大は小を兼ねる」、つまり難しいものに取り組めば簡単なこともできるようになるのは限定的なケースで通用することであり、TOEFL iBTやIELTSのスコアが伸びていない状態でSATの対策をしてもあまり意味はありません。それどころか、意味を覚えなければいけない単語が増えてしまったり、役割や内容がよく分からない文法項目にふれることが多くなってしまったりすることで、学習者への負担が大きいものになってしまい、英語運用能力試験の準備が順調に進まなくなる恐れがあります。その結果、他のより合格が期待できる帰国生入試やAO入試の受験に悪影響が及ぶということになってしまうと元も子もなくなってしまいます。

このようなことを考えると、これらの入試の準備として最も優先すべきはTOEFL iBTやIELTSといった外国語運用能力試験の対策ということになり、その成績が必要な水準を上回った段階でSATで出題される問題を使った演習を始めるべきだと思います。その優先順位を間違えないようにしてください。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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