今から帰国生入試やAO入試に向けて準備すべきことについて(10) ―帰国生大学入試についてvol. 320―

(2022年5月13日 19:30)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、帰国生入試やAO入試の受験準備としてこの時点で行うべきことの中で、最も優先順位が高いのは高校の授業外で進めなくてはならないSATの対策ではなく、TOEFL iBTやIELTSなどの成績を伸ばすための学習であることを確認しました。これらの入試において大学入学資格の取得を求めるのは少数である一方、TOEFL iBTやIELTSなどの成績が低いままでは合格が期待できるものが大きく限定されてしまいます。

さて、SATの対策をしている人の中には、最近首都圏の私立大学で急激に増加している英語プログラムに9月入学したいと考えている人が一定数いるようだと前回の記事で述べましたが、そもそもこのような形で進路を決定するのには慎重になるべきだと我々は考えています。と言うのは、このプログラムを開設している大学や学部・学科のHPやパンフレットを見たり、これまでの生徒の話を聞いたりしている限り、学生の知的な成長を促す、もしくは何らかの専門的な知性を身に付けることができるかという点に疑問が残るものが目立つからです。

以前から9月入学プログラムを始めていたところでは「リベラル・アーツ的なカリキュラム」をアピールポイントとすることが多いですが、教育理念として確固たるものがあった上でこのような方針を採用するのは問題がないと思われます。しかし、実際には、例えば早稲田大学の国際教養学部のように、履修することができる授業がどのようにつながっているか、学生が何かを専門的な形で追求したいと考えた時の対応がどのようなものかが見えにくい上に、学生にどのような形で学びを深めていってほしいと考えているのかがよく理解できないものが多く、極端なケースでは募集をかけた際にたまたま集まった英語圏出身の教師の専門領域に関する授業をただ並べているように見えるものもあります。

また、最近、日本の文部科学省大学の世界ランキングにおいて日本の大学の順位が上がらないことを問題視して(この順位の決められ方には、京都大学前学長の山極寿一氏のように有効性に疑問があるという人は少なくありません)、大都市圏の国立大学や私立大学を中心に留学生を受け入れることを促すような政策を行っています。これを受けて、上智大学のSPSFのようなプログラムが作られた訳ですが、いくつもの大学が同じような動きを見せていますし、このような傾向は日本にとどまらないものなので、一つひとつの大学が学生に十分な内容を伴う形で授業が提供できるだけの教員を集められるかに不安が残ります。

例えば、これは4月入学のものになりますが、立教大学法学部国際ビジネス法学科のグローバルコースでは、国際的な商取引を行う際の契約書の作成の仕方に詳しい英語圏出身の人が教員を務めることだけがアピールポイントとされているようで、法学の基礎から理解を深められるカリキュラムになっているのかがよく分かりません(昨年、パンフレットの内容があまりに明確でないので、大学に問い合わせをした人がいましたが、この点については答えてもらえなかったようです)。このように、日本の大学で英語を使った授業が中心となる9月入学プログラムには、そこで自分が学びたいことを追究できるかという点に大きな疑問が残ります。次回もこの点についてもう少し深堀りしたいと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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