今から帰国生入試やAO入試に向けて準備すべきことについて(13) ―帰国生大学入試についてvol. 323―

(2022年6月10日 18:00)

こんにちは。SOLの余語です。
5月27日の記事では、欧米で一般的な雇用形態とされている「ジョブ型雇用」がこれから日本でも導入されると予想されており、経済的に安定した生活を送るには大学や大学院で専門的な知識や思考のあり方を学ぶ必要があることにふれた上で、ある大学教授の体験などを基に、多くの場合、そのような学習は母語で行うのが最も効果的と考えられると述べました。これを踏まえると、関係者から「おままごと」と評されることのある日本の大学の9月入学プログラムに入るのを目指すよりは、TOEFL iBTやIELTSのスコアアップのような帰国生入試やAO入試でよりよい成果を上げるための準備を高校卒業前にしておく方がよいように思います。

さて、本来であれば、この後に北半球の国や地域の高校に通う人が帰国生入試やAO入試に向けた準備のために日本へ本帰国する前に小論文試験の対策として何をすればいいのかという点についての記事を掲載する予定だったのですが、話が少し横道に逸れている間に、すでに少なくない数の人が高校を卒業する時期に入ってしまいました。そのため、今回は日本語の学習に取り組むことが英語運能力を伸ばすことにもつながるということを簡単に紹介し、次回から日本に帰ってくる前に揃えておくべき書類にはどのようなものがあるのかを説明したいと思います。

言語学習に関する研究においては、人間が幼い頃に母語となる言語を学ぶプロセスの中で、親や兄弟などがコミュニケーションを取っているのを聞いて言語の運用のあり方に関する情報を収集し、それを様々な場面で使ってみた時の周囲の反応を見るという体験を大量に蓄積していくと言われています。この点、日本から英語圏の国や地域に渡航した人の多くにとって、上のような学習方法で英語運用能力を伸ばすために必要な時間を確保することは難しいですし、学習者の年齢によっては脳が大量の情報を適切に処理することができなくなっていることも考えられます。

そのような状況では、英語を外国語として意識的に学んでいかなければならなくなりますが、そこで大きな役割を果たすのが母語である日本語で得た知識(これには社会や人間が直面する問題に関するものだけでなく、一般的に言語がどのように成り立っているかというものも含みます)や、日本語で様々なものを学ぶ中で得た学習に関する方法や姿勢です。これらのものに関する蓄積が多ければ多いほど、外国語の習得がスムーズに進むというのは、海外から移民を積極的に受け入れてきた国や地域で、母語である程度学校教育を受けてきた人の方が、そうでない人よりも彼らにとっては外国語が主な使用言語となる教育機関での成績などが高いものになることを示す研究成果で裏付けられています。

また、他の研究によれば、どんなにある言語の運用能力が高い人でも、それに外国語として接している人は例えば耳から入ってきた音声情報を母語に変換して理解しているようです。これらの知見を踏まえると、英語を学ぶために海外に渡航した場合でも、TOEFL iBTやIELTSで見られるようなアカデミックな内容のものに対応できるようになるには、まとまった時間が取れる時でいいので、年齢相応なトピックを扱う日本語の文章などにふれることでその運用能力を上げるようにしておいた方がよいように思われます。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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