慶應義塾大学法学部のFIT入試について ―帰国生大学入試についてvol. 334―

(2022年9月2日 20:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、慶應義塾大学の総合政策学部や環境情報学部が実施しているAO入試の概要を紹介しました。これらの学部には、学生の多様な関心に応えるような学際的なカリキュラムがあるだけでなく、教員と学生の距離が近い学習環境があるため、最近、学習意欲が高い人からの人気を集めるようになっていますが(SOLのOBOGからの評価も高いです)、この入試を受験する場合、まずは1次選考の判断材料となる書類を説得力ある形で作成していくのが重要です。そのプロセスにしっかり時間をかけるようにしましょう。

さて、この大学の文系学部では、SFCの2学部の他に法学部の法律学科や政治学科がFIT入試という名称で総合型選抜を行っています。前回の記事で取り上げた総合政策学部や環境情報学部とは違い、これらの学科では、教員が活発に様々な研究プロジェクトを立ち上げていますが、カリキュラムは僕が在籍していた頃とあまり変わりがないものですし、大人数制の授業がほとんどであることなどを見ると、教員が学生に寄り添う姿勢がどれだけあるのか疑問が残ります。法律学科が法曹界における実務家を多く輩出していると言っても、多くの人は大学だけでなく、司法試験の受験準備を行うための塾に通っている訳ですし、政治学科が内部進学者や受験生からの人気を集めているのも「簡単に卒業できる割に就職活動の成果が出やすい」ことが理由であるという話をOBOGなどから聞くことが多いことを踏まえても、ここを例えば中央大学の法学部などと比較して「お勧めの学部」とできるかについては躊躇してしまうというのが正直な印象です。

海外の教育機関に在籍した経験のある人は、この入試にA方式で出願していることが多く、出願資格を得るための条件(3)で例示されている(a)「日本語以外のさまざまな外国語の学習に熱心に取り組み、かつその成果を検定試験などで証明できる者」、もしくは(c)「ボランティア活動や地域の社会的活動を熱心に行い、その実績を示せる者」に合った形で第1次選考のための書類の作成をするのだと思います。(a)の方向性で自己推薦書〔Ⅰ〕を作成する場合、TOEFL iBTやIELTSといった外国語運用能力試験の成績ができるだけ高い方が望ましいですし(TOEFL iBTで95、IELTS7.0という水準は超えた方がいいでしょう)、そこに至るまでの学習のプロセスをできるだけ詳細に説明できるように準備をすべきです(それに合わせて在籍していた高校が採用する教育制度における大学入学資格取得のための統一試験でよい成績を修めていることをアピールできれば内容がより充実したものになります)。また、それでは所定の字数が満たせないのであれば、条件(c)を満たすようなものを合わせるべきでしょう。

第2次選考では、A方式で受験する場合、模擬講義を受けた上での論述試験と口頭試問が行われることになります。このうち、論述試験では2つの学科で共通の問題が出題するとされており、他の大学はこのような形で試験を行う場合、より専門的な内容を扱わない学科に合わせて問題を作成するのが通常です(この場合、社会問題に関して様々な観点から分析する文章を多く読むことが対策の一つになります)が、この大学の法学部は帰国生入試の問題などを見る限り、法学的な問題を出題することが珍しくありません。そのため、政治学科への入学を希望する人も法学の入門書などを読み、この学問領域に関する基礎的な理解を身に付けておく方がいいと思われます。

この入試の出願手続き期間は8月初めから9月初めに設定されています(今年度はWeb登録期間が8月5日~9月5日で、書類を郵送する期間が9月1日~9月5日です)。総合政策学部や環境情報学部のAO入試ほど多くの書類の提出が必要になる訳ではありませんが、スケジュールを意識した形で書類を作成していくべきだと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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