社会的な活動への参加について (9) ―帰国生大学入試についてvol. 371―

(2023年7月21日 15:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、帰国生入試やAO入試の出願手続き時に提出する志望理由書について、その内容が試験官に18、19歳の人が書いたものとして「自然なもの」と評価されるものがどのようなものかを具体的に理解できるように、SOLの帰国生大学受験セミナーのOGが書いたものを紹介しました。法学や経済学、政治学といった社会科学系の学問を扱う学部・学科を受験する場合に、社会的な活動に参加した体験がどのような役割を果たすことができるのかを確認してもらえればと思います。

少し話が逸れますが、上で述べたような条件を満たす志望理由書の典型的なものには他の方向性のものもあります。その一つが、海外での日常生活を送った体験や周りの人と社会問題などに関してコミュニケーションを取る中で大学で学びたいものが明確になったという展開のものです。参考として以前の生徒が慶応義塾大学経済学部の帰国生入試で提出したものを以下に貼っておきます(この生徒も面接試験で厳しい状況に陥ることなく無事に合格しました)。

カナダに留学している間、経済学的視点で社会を見ることが、様々な問題の理解に繋がると実感することが幾度かあった。その中の一つにカナダの先住民に関わる問題がある。彼らについては、ハーパー前首相が過去に見られた政府の非人道的な扱いについて公式に謝罪したのに加えて、現在のトルドー首相がその路線を継承したことで、カナダ社会全体が彼らを保護する政策を支持しているように思える。しかし、実際には先住民の生活水準を引き上げるための社会制度が大幅に拡充されたという話は聞かない。このギャップの背景に何があるのかということについて疑問を抱いていたのだが、ある社会における納税者が社会制度によって彼ら自身にメリットがあると感じなければ、税金を納めることに対するインセンティブが低下し、その結果、社会制度を支えるための財源を確保できないことがあるという経済学的な分析があることを知った。この点について、ホストファミリーや周りの人に話を聞くと、先住民の人々が置かれた状況に同情はするものの、彼らの状況を改善するための制度には自分たちの税金が使われており、その目的や実態について厳格に審査する必要があると述べた人が少なくなかった。このような経験から経済学的な思考の有効性を実感したのだが、将来、私が個人的に直面する問題の解決策を考える際にも、社会を構成する一員として様々な政策や制度が望ましいものであるかを判断するのにも重要なものであると思った。そのため、貴学の経済学部では、経済学的な思考のあり方について理解を深めたいと考えており、先生方や様々な学生との対話が可能になる少人数教育が重視される環境や、一つのテーマについてじっくりと一年間研究するという学び方ができることを魅力的に感じている。貴学での4年間の充実した学生生活を通じて、人生の様々な場面で経済学的な分析や思考を実践できる人間になれればと思う。

SOLの帰国生大学受験セミナーで受験準備をしている人の中には、このような方向性で志望理由書を書き上げる人も少なくないですが、それには自分が滞在していた国や地域における社会問題に関する情報を収集する、もしくは社会問題についてホストファミリーや学校の教師など周りにいる大人としっかりとしたコミュニケーションを取ることができるだけの第二言語の運用能力が必要となり、特に海外にいた期間が短い単身留学生にとっては難しいものに感じられることが珍しくありません。また、日頃から意識していないと志望理由書を作成する時点で適切なトピックがあることを思い出すのに時間がかかることもあるため、社会科学系の学部を帰国生入試やAO入試で受験する場合には社会的な活動に参加する方がいいのではないかと僕は考えています。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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