小論文試験対策として海外でやっておくべきことvol.1 ―帰国生大学入試についてvol.5―

(2010年12月08日 14:57)


こんにちは。SOLの余語です。
前回は、小論文試験の対策をすることが受験生にもたらす大きなメリットについて述べましたが、今回は小論文試験対策として、受験学年以前に海外でやっておくべきことについて説明したいと思います。

前に勤務していた予備校でもそうでしたが、海外の高校に通う人たちの教育相談を担当していると、10年生や11年生の人から小論文の通信指導を行うことを依頼されることがあります。また、今年の5月に上海に行った時にも確認することができましたが、日本の大手予備校の海外校で受験学年より前の段階から小論文の授業を受ける人も多くいます。

このように、受験学年前から小論文に取り組みたいと考える人が多い背景には、日本語で小論文を書くという、日本の学校に通っている時には経験できなかったこと(欧米の学校では早い段階からレポート形式の課題が多く出されますので、海外生や帰国生の場合、そこで用いられている言語では経験があるはずですが)に初めて取り組むということに対する不安があるのでしょう。このような不安感は、大学受験の時に小論文試験を受けなければならなかった僕にも共感できるものです。

しかし、海外にいる間から小論文試験対策に多くの時間を割くということは、それによって得られるものとそうでないもの(一歩踏み込んで言うのであれば、失ってしまうもの)を比較衡量すると、得策であるとは思えません。確かに、海外で塾に通ったり、日本の通信教育を受講したりすることには、年齢相応の日本語にふれることができ、それが社会や人間に関する理解を深めるにきっかけになるということがあります。また、漢字や正しい日本語の使い方などを受験学年以前に習得することは、入試のための準備を集中して行うことのできない南半球の海外生にとっては重要なことかもしれませんし、北半球の海外生にとっても卒業してからの受験生活のよいスタートを切るということにつながることでしょう。

ただ、日本語の正しい表記法や小論文として適切な構成といった、小論文を書く際の形式的な面は、2ヶ月ほど小論文を書く練習を集中的に行っていれば、多くの人にとって自然に身に付くものです。前島や僕がこれまでに指導してきた生徒の中には、海外での生活が長期になった上に、その中で日本語を使う機会がほとんどないという人(極端なケースでは、家族との会話でも日本語を使用しないという人もいました)が何人もいますが、そのような生徒の場合でも日本語が読めるのであれば、数ヶ月の練習でちゃんとした日本語の文章が書けるようになります。要するに、これは「慣れ」の問題だということなのでしょう。

また、小論文の学習に注力することで、学校内外での日常生活が疎かになってしまうことは大きな問題です。このように考える理由はいくつかあるのですが、今回は、小論文を実際に書く段階(これに加えて、志望理由書など、帰国生入試に出願するのに必要な書類を書く場面)において、具体例として提示する生活体験や社会に対する考察を手に入れる機会を失ってしまうことについて述べたいと思います。

小論文を書く際には、自分の主張の有効性を裏付けるために、何らかの具体例を用いるという手法があります。それは、例えば、最近日本で議論になっている「英語を使って英語を教える」という教育法の是非に関する意見を求められ、自分が実際に学校で受けた教育がどのようなものであったか、それが自分の英語運用能力の向上にどのように役立ったのかということを、自分の主張の論拠(の一部)として使うということです。言語学や教育学、認知心理学などの理論を知らない状態(大学受験生の段階ではこのようなものに対する理解がないのが一般的でしょう)では、抽象的な言葉だけで800~1,000字の小論文を書くのは無理でしょうから、このような手法を用いることになるのは当然のことだと思います。

しかし、社会との関係が希薄になってしまうと、具体例として使えるものが手元にないので(このようなものを読書などを通して補うことのできる余地はありますが)、いくら練習しても小論文を書き進められないという状況に直面するという危険性が生じてきます。実際に、台湾に滞在していたS君は、日常生活が学校と家の往復になってしまったので、多様な生活体験を蓄積することができませんでした。そして、いくら課題文の内容についてこちらが解説し、どんなに理解しているように見えても、小論文を書き上げるのに苦労するという状態から抜け出すのに時間がかかるということになってしまいました。「後悔、先に立たず」と言いますが、生活体験を蓄積するのには時間がかかります。将来の不安に駆られることなく、バランスのよい生活を送るようにしてください。

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