南半球の高校に単身留学している人の大学受験についてvol.2 ―帰国生大学入試についてvol.49―

(2011年10月23日 16:35)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、南半球の高校生が日本の大学の帰国生入試を受験する際に直面する問題について述べました。それは、帰国生入試の制度設計が北半球の国々の教育制度を考慮して行われていることに起因するものでしたが、これらの問題の影響をもっとも強く受けるのが、オーストラリアやニュージーランドの高校に通う単身留学生でしょう。

これらの国の高校に保護者の仕事の都合ではなく、留学という形で通うことになった人は、その高校に高校1年生か2年生に入学、または転入し、2、3学年在籍した後に卒業するというのが一般的です。日本の大学の帰国生入試は、滞在国の高校に継続して2学年在籍すれば出願資格を認められるところが大半ですので、その点ではこれだけ滞在期間があれば何も問題はありません。しかし、この期間で実際の入試の英語試験に対応できるだけの英語運用能力を習得できるかというと、そうではなかった人もこれまでに多く見てきました。

日本語を母語とする人がアカデミックな英語を読み書きする能力を向上させるためには、長期間に渡って、それを会話の場面で英語を使う経験を蓄積するのとは異なる形で(例えば、文法のテキストを読むということです)学習を行う必要があることは、以前のブログ記事でも繰り返し述べていますが、それは南半球の高校に単身留学した人でも同じことです。留学する前に日本の学校などで英文法をしっかりと学習した人などでなければ、2、3年という期間は、入試の英語試験に対応する力を身につけるのに十分なものとは言えません。

また、単身で留学している人は、留学生活の始めの方で滞在国の高校や語学学校で基礎的な英語運用能力を習得するためのクラスを受講するのが一般的ですが、そのクラスを担当する教師に英語を第二言語として学ぶ人がどのような学習を必要としているのかということについての十分な理解がなく、英語圏のネイティブが英語を習得する過程を絶対的なものであることを前提にした授業を行う場合があるという話も聞きます(コミュニケーション能力重視のものや、英和辞書などではなく英英辞書の使用を求めるものがこれに当たると言えるでしょう)。

このような授業は、英語と言語体系が大きく異なる日本語を母語にする人にとって、アカデミックな英語を習得するという点で高い学習効果を期待できるものではありませんし、それを受講した人に、会話の場面で英語を使用してさえいれば、英語運用能力を全般的に上げることができるという誤解を与えかねないという点で問題があります。しかし、単身で留学している人にとって、このような問題に気付くことは容易なことではありません。次回の記事では、このような事態が生じる理由について述べたいと思います。

それでは、今回の内容に関して、ご質問などがありましたら、以下のフォームよりご連絡ください。

【お問い合わせフォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/contact/



トップへ戻る