南半球の高校に単身留学している人の大学受験についてvol.3 ―帰国生大学入試についてvol.50―

(2011年10月31日 19:20)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、オーストラリアやニュージーランドの高校に単身で留学している人が、日本の大学の帰国生入試に対応するだけの英語運用能力を習得しづらい状況にあるということを述べました。それには、それらの国での滞在期間の短さや、英語圏のネイティブに英語を第二言語として学習することに対しての理解がない人がいることが関係していますが、後者は学校に適切な学習上のアドバイスをしてくれる人がいないということを意味します。

これは、特に単身留学生にとって大きな影響を及ぼす問題です。日本人の間では最近、コミュニケーションの機会を多く持つことだけで言語運用能力が向上するという考えが広まっており、高校の英語の授業などが見直されることになっています。単身留学生の中にも、望ましい英語の学習法は英語圏の国々で日常生活における会話経験などを積むことであると考えている人も多いかと思います。

しかし、自分で外国語の学習をし、ビジネスの世界などで通用するような高いレベルの運用能力を習得した日本人であれば、それだけでは足りないことを理解しているはずです。なぜなら、このような人は中学や高校、大学といった教育機関で英語の文法や語彙、表現を体系的に学習した経験を持っており、その上に実際に使用する経験を積み上げることで現在の能力を習得したからです。

この点、海外にある企業などで働く保護者と一緒に海外に滞在している場合には、上で述べたような人が身近にいるということになり、英語の学習についての適切なアドバイスを受けることが期待できますが、一人で海外に留学している人の中でこのような大人が「背中を押してくれる」経験をした人はそれほど多くないと思います。そして、もともと英語の学習に対する意識の高い人以外は、その必要性を認識し、学習のための時間を設けようという気にはならないということになるのです。

また、単身留学生を受け入れている高校では、英語で日常会話を行えるだけの能力があれば単位や一定の成績を取得できる、実習的な科目の授業(例えば、ライフセーヴィングやホスピタリティ)が多く設けられているところがあり、単身留学生の中にはこのようなものに偏った形で履修する授業を決定する人がいます。このような授業を多く受けている限りは、会話能力さえ身に付いていれば困ることもないでしょうから、英語の学習に対するモチベーションが高まらないということがあってもおかしくありません(この点についても、保護者と一緒に海外に滞在している場合には、将来のことなどを考えて、学問的な内容の授業を履修することを促され、その中で英語学習に取り組まなければならないという気持ちになることが期待できます)。

以上で述べた事情から、南半球の高校に単身で留学している人が英語運用能力をアカデミックなレベルにまで高めることは難しいと言うことができると思います。しかし、インターネットなどで流れている情報には、日本の大学の帰国生入試はそれほど難しくないと書かれているものがあるので、それでも問題はないと考える人もいるでしょう。そこで、次回は日本の大学(特に、首都圏の有名大学)の帰国生入試の現状について述べる予定です(帰国生入試の現状についてはSOLのメールマガジンでも取り上げています。配信を希望する人はこちらから登録してください)。

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