南半球の高校に単身留学している人の大学受験についてvol.5 ―帰国生大学入試についてvol.52―

(2011年12月4日 14:55)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、首都圏の有名大学に帰国生入試制度を利用して入学するにはどれぐらいの英語運用能力が必要になるのかということを、TOEFL iBTのスコアなどを用いて説明しました。そこで例としてあげたスコアはいずれも、特に海外での滞在期間が短い単身留学生にとっては、取得することが難しく感じられるものだと思いますが、首都圏の有名大学の帰国生大学入試における競争は近年、激しくなる傾向にあります。

その原因の一つに、首都圏の有名大学の中に、帰国生の受け入れに関して消極的な姿勢をとる大学が増えてきたことです。例えば、立教大学では帰国生入試を実施していた学部が次々とそれを廃止し、今年度は文学部と経営学部を除いた全ての学部が日本や海外の高校で一定以上の成績を取得していることが出願条件となっている自由選抜入試で帰国生を受け入れるようになりました。その他にも、帰国生が受験できる特別入試がなくなってしまったところ(例えば、法政大学法学部)や、受け入れ人数を大幅に削減したところ(例えば、上智大学外国語学部英語学科や学習院大学法学部)があります。

このような動きの背景には、日本の大学が帰国生の学力や学習意欲は一般生に比較して低いものであると判断していることがあります。それは昨年度まで実施されていた法政大学法学部の自己推薦入試の出願要項で「帰国生入試を廃止した理由」とされていましたし、一定以上の学校成績を修めていることや、TOEFLやTOEICなどでスコアを提出することを求めている大学が増加していることもこのような認識の現われだと言えるでしょう。

また、海外の高校を卒業した帰国生が大学生活を送っていく中で問題(例えば、一時期ニュースなどで大きく取り扱われた大学生の大麻所持問題などがこれに当たります)を起こすことを日本の大学が憂慮しているという話をよく聞きます。最近、帰国生入試の制度を日本の高校に編入した帰国生を広く受け入れる形に改編したり(青山学院大学では、日本の高校に編入した帰国生も受験することのできる海外就学経験者入試を実施する学部学科が増えていますし、国際政治経済学部ではTOEFLやTOEICで一定以上のスコアを取れば、交換留学で一年だけ海外に滞在した人でもこの入試制度を利用できるようになりました)、上智大学(特に、外国語学部英語学科)のように日本の高校の卒業見込み者のみが受験可能な公募推薦入試において海外経験のある受験生を積極的に受け入れるようになったりする大学が増えてきているのには、上で述べた2つの事情が関連していると推察されます。

今回述べたような最近の傾向を考えると、首都圏の有名大学では年度によるばらつきはあるものの、全体的な傾向としては今後ますます(少なくとも、海外の高校を卒業した人にとって)競争が激しいものになっていく可能性があります。また、そのようなことが起こらないとしても、海外に滞在した期間における学習成果を提出できることを出願条件とする(もしくは、そのようなものを提出できる人を優遇する)大学が増えていくことは想像に難くありません。そして、それは海外の高校に単身留学している人にとって、克服すべき課題のレベルが上がっていくということを意味しています。

さらに、最近、実際に帰国生入試を受験した人たちからよく聞くようになった入試会場で見られる理解が難しい光景が、単身留学生にとってのハードルを一層高いものにすることが考えられますが、次回の記事ではそれを取り上げたいと思います。

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