中国語圏の国の現地校に通う人の大学受験についてvol. 3―帰国生大学入試についてvol.67―

(2012年2月28日 16:55)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、中国や台湾といった中国語圏の国の現地校に通う人は日本の大学の帰国生入試に向けた準備として中国語の学習に力を注ぐべきであるということを述べました。特に、2012年度の受験を考えていて、英語運用能力が現時点で一定の段階に達していない人の場合、無理に英語の学習を続けるより、HSKの対策や受験に専念した方がよりよい受験結果を期待できるでしょう。


さて、今回は、中国語圏の国の現地校に通う人が行っておくべきもう一つの受験準備として、小論文試験に向けた対策を挙げたいと思います。日本の大学には、帰国生入試の筆記試験が小論文試験のみで構成されているというところがあり、例えば、首都圏の有名大学では横浜国立大学や東京学芸大学、埼玉大学などが小論文試験と面接試験(学部によっては、これらの試験に加えて書類審査)によって合否を判定する大学です(上智大学の帰国生入試でも、小論文試験や日本語の読解力に関する試験だけが試験科目になっている学科が多くありますが、出願資格を得るためにTOEFLやTOEICなどで大学が定めるスコアを取ることが求められていますので、ここでは除いておきます)。


外国語試験がなく、英語圏からの帰国生と対等な立場で競争に臨めるからか、僕らがこれまでに指導してきた中国や台湾の現地校に通っていた人の大半がこのような大学を受験校として選択してきましたが、問題はその数が多いとは言えないことにあります。また、英語圏からの帰国生と言っても、首都圏の有名大学の帰国生入試における英語試験に対応するだけの英語運用能力を習得できた人ばかりではありませんし、上で挙げた大学はいずれも第一志望にする人が多い、もしくは例えば横浜国立大学の経済学部や経営学部のように、その後に入試を実施する国立大学を本命としている人が練習台として受験する大学です。当然、これらの大学の帰国生入試における競争は厳しいものになりますので、中国語圏の国の現地校に通う人にとって、早めに小論文試験に向けた準備を始めることが必要不可欠ということになります。


もっとも、滞在地にいる間から小論文試験対策の学習をすると言っても、入試で出題された課題などを使って小論文を実際に書くといったことをしなければならないということではありません。日本語の正しい表現や表記の仕方、小論文として望ましい文章構成などは、高校卒業後に準備を始めれば受験までに習得できるのが一般的ですし、小論文はどれだけ書いてみても、実際に生徒を指導してきた経験を持つ人に添削をしてもらわなければ、高い評価を受ける答案を書けるようになるのが難しいものですが、そのような学習環境が身近にはないという人も多くいるかと思います。このようなことを考えると、滞在地で行うべき準備は、より適切な形で表現するのであれば、よい小論文を書くための「素地」を形成することであるということになります。


例えば、日本語で書かれた難解な文章の内容を正確に読み取れるということは、上で述べた「素地」の一つです。大学がHPなどで公表している過去問などを見れば分かりますが、小論文試験は多くの場合、受験生に課題文を読ませた上で、その文章の筆者の主張に対して自分の考えを述べることを求めるという形で出題されます(これに読解問題が付くこともあります)。他人の意見についての考えを表明することが許されるのは、それに賛成するにせよ反対するにせよ、その内容を正しく把握しているという条件を満たした場合に限られますが、文章読解力がなければこの最低限の条件をクリアすることができません。このため、中国語圏の国の現地校に通う人は、高い文章読解力を身に付けることを目標に、新書などを読んだり、現代文の問題集に取り組んだりしてもらえればと思います。


それでは、次回は、小論文を書くための「素地」の形成として滞在地で行っておくべきことをもう一つ紹介する予定です。今回の内容に関して、ご質問などがありましたら、以下のフォームよりご連絡ください。


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