南半球の高校に単身留学している人の大学受験についてvol.15 ―帰国生大学入試についてvol.63―

(2012年2月3日 16:35)

こんにちは。SOLの余語です。
「帰国生大学入試について」では、ここまで14回の記事でオーストラリアやニュージーランドの高校に単身で留学している人が、日本の大学の帰国生入試の準備をする中で抱える問題やそれをどのように克服すべきかということを説明してきました。ブログの更新ペースとの関係で、このシリーズは4ヶ月に渡って掲載されることになりましたので、今回の記事で全体の内容をまとめておきたいと思います(以下、「vol. ~」と表示されているリンクは、その前の文で扱ったトピックに関する記事へのものです)。


まず、オーストラリアやニュージーランドの高校への単身留学生が抱える問題の中で最も大きなものの一つは、日本の大学の帰国生入試が北半球の国々の教育制度を基に制度設計がなされていることです(vol. 1)。例えば、私立大学の入試の多くが9月から11月までの期間に実施されることになりますが、5月・6月に北半球の国々の教育制度を採用した高校を卒業する人は、このようなスケジュールが組まれていても、4ヶ月から6ヶ月の間集中的に対策をすることが可能になります。しかし、南半球の高校ではこの時期、通常授業が行われており、受験直前の夏期に話を限定すると、6月の終わりから7月の中旬にかけての2週間しか受験準備にあてることができません。


さらに、英語運用能力が帰国生入試の英語試験やTOEFL iBT、TOEICに対応するレベルまで上がっていない人が多いことも重要な問題だと言えるでしょう。これには、滞在期間が多くの場合、2、3年と短いことや、英語を第二言語として学ぶ人が英語運用能力を上げるためにどのような学習を必要としているかということに関して十分な理解がない教師がいることが背景にありますし(vol. 2)、これに加えて、会話経験を積み上げていけば、英語で読み書きする能力も同時に上がっていくという、日本人の多くが最近抱いている英語学習に関する大きな誤解も関連しています(vol. 3)。


日本の大学の帰国生入試は、一般的に国内生が受験するものより簡単に合格できるものだと考えられているようですが、地域によって競争の激しさや難易度に大きな差があり、首都圏の有名大学の帰国生入試は一般入試よりも倍率が高いところがあるなど、近年合格に向けた激しい競争が展開されています(vol. 4vol. 5vol. 8)。また、今年の受験生から、すでに第一志望の大学に合格した人が、社会的にそれより低い評価を受けている大学の入試を受験していたという話をよく聞きましたが、これは受験における競争をより一層厳しいものにします(vol. 6vol. 7)。このような状況では、上で述べたような問題を抱える南半球の単身留学生は、北半球の教育制度を採用する高校に通った生徒に比べて不利な立場に置かれることになります。


それでは、南半球の高校に通う単身留学生はどのようにこれらの問題を克服すべきでしょうか。何よりも重要なことは、受験準備を最終学年の始まる直前の12月・1月の休暇から始めることです(vol. 9)。この時期に小論文課題に多く接したり、帰国生入試の英語試験対策やTOEFL iBTやTOEICの受験に向けた学習を行ったりすることによって、北半球の教育制度を採用する高校を卒業した人と同等の学習期間を確保することができます。また、インターネットなどでは南半球の高校に通う人は、アメリカの大学入学資格を得るための試験であるSATを受験していなければ出願資格を得られない大学がいくつもあるとの情報が流れていますが、このような誤解が解消されることにより、自分に必要な学習に集中して取り組むことが可能になります(vol.10vol. 11vol. 12)。また、自分の学問的適性などを把握することによって、志望する学部・学科を絞り込めますし(vol. 13)、滞在地に帰った後に学習を進めていく際の相談役になる教師を見つけることもできます(vol. 14)。


なお、上述の時期に受験準備をできなかった人は、卒業した次の年に受験を考えた方がいいでしょう。その方が大きな成果を上げられる可能性があるからですが、次回はその点について説明し、このシリーズの最終回としたいと思います。


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