帰国生入試の受験資格について ―メールマガジン2010年6月15日配信分―

(2013年12月13日 20:20)

こんにちは。SOLの前島です。
教室立ち上げまでの期間が短かったため、今夏の授業については十分な広報活動が出来ませんでしたが、さすがに今週に入ってからは問い合わせが増えました。受け入れのための準備は着実に進んでいて、まだ残っているのは面談スペースの仕切りの設置と、そこの机にもう1度柿渋を塗り重ねることくらいです。通ってくる生徒さんが来週から徐々に増えていきますが、教室についてどんな感想が聞けるのか、彼らが成長する場にふさわしい教室になったのかどうか、期待と不安の入り混じった気持ちでいます。


さて、今回は帰国枠での大学の受験資格について述べたいと思います。


日本の大学は入学者選考という点で非常に独特ですが、どちらかと言えば悪い意味で独特であり、多くの弊害を持っています。その弊害のお陰で生計を立てられている私でさえ、大きく改めるべきだと感じるほどですが、今回の主題に関連する弊害はまず、各入試枠を利用する際の利用資格が煩雑であることです。いわゆる一般入試以外の試験はいわば特別扱いのようなものですので、特別扱いを受けるための資格が定められています。そして、帰国生用の入試は、今回ここでは論じない様々な事情により、資格についての考え方が最も複雑なものになっています。今回はその考え方について、注意すべき大学・学部を例として挙げながら説明していきたいと思います。


1.資格として問われる点
帰国生入試、海外就学経験者入試、AO入試の中の帰国生枠など、日本国籍か永住資格を持っている帰国生用の入試で資格として問われるのは主に、日本の教育課程以外の教育を受けたか、海外滞在年数は何年(何学年)か、海外での卒業か、海外への渡航は親の仕事など自己都合以外の理由か、どのような学習上の成果を持っているか、高校卒業から大学入学までどれくらいの期間が経つか、6歳からの12年間の教育課程を飛び級などで早く修了しているか、の7点です。たとえば、2010年6月にアメリカ現地校を卒業し、卒業まで継続して3年間アメリカ現地校に在籍し、アメリカへの渡航はお父さんの転勤によるものであり、高校卒業までお父さんはアメリカ勤務であり、アメリカの大学入学資格試験であるSATを受験しており(reasoning testだけでなくsubject testsも3科目受験。ただしJapaneseとmath1は含まず、math2は含む)、英語力を確かめるためにTOEFLも卒業前に受験していてスコアは80であり、飛び級はしておらずすでに18歳である、という生徒が2011年の4月入学を目指して帰国生用の入試に臨むとしたら、ほとんどの大学・学部で受験資格が認められます。ほとんどの、というのは、大学入学資格試験についていわゆる理系学部の場合に科目の指定が厳しいことがあり(たとえば慶應大理工学部)、上記に加えscience系の科目の受験を求めるためです(慶應大理工学部ならphysicsとchemistryが必要)。
以下で、7点について順に見ていきましょう。なお、以下はあくまでも帰国生用の入試枠についてであり、帰国生に限定しないAO入試や自己推薦入試などについては当てはまりませんので注意してください。これについては最後にもう一度触れたいと思います。


2.日本の教育課程以外の教育を受けたか
日本の高校、中等教育課程の後期に当たる期間に、日本以外の教育課程、教育制度に基づいた学校に通っていたかということです。日本の教育課程の学校にしか通っていない場合は、桜美林大、中央大、津田塾大(国際関係学科以外)、東洋大、日本大、南山大、京都外語大、関西大など限られた選択肢となります。


3.海外滞在年数は何年(何学年)か
大多数の大学が、海外で卒業する場合には卒業までの継続2年以上の在籍を求めています。2年に満たなくても帰国生用の入試で受験資格が得られる大学は非常に少なく、帰国生がある程度集まる大学としては、中央大、桜美林大、京都外語大くらいしかありません(いずれも継続1年以上の在籍)。逆に、2年でも足りないのは東京大、東京外語大、東北大です(いずれも継続3年以上の在籍)。いずれにせよ、ここでの年数は学年を意味しますので、たとえば2008年9月から2010年6月の在籍であって1年10ヶ月しかなくても、学年の最初から最後までいればOKです。
海外での卒業ではなく、日本の高校に編入した場合は、継続2年以上の海外での在籍ではなく、中学・高校または中等教育機関での6年間に当たる期間のうちの通算3年間の在籍が求められるのが一般的です。2年でも受験資格を認めるのは、上記の中央大、桜美林大のほか、ICU、上智大(高2途中の編入の場合)、成蹊大(高2の2学期以降の編入の場合)、南山大、および津田塾大を始めとするいくつかの女子大などです。


4.海外での卒業か
海外での卒業となる場合は、滞在年数など他の条件を満たせば何の問題もありませんが、日本の高校に編入した場合は、それによって帰国生用の入試の受験資格を失う大学があり、そうでない場合も編入から大学入学までの期間が問われます。
海外で卒業しないと(または海外での卒業見込みでないと)受験できないのは、6割くらいの国公立大(たとえば北海道大、東北大、筑波大、東京大、一橋大、横浜国大経済学部、京都大法学部など)と、早稲田大、慶應大文学部・理工学部・総合政策学部・環境情報学部・医学部・薬学部、日本大、京都外語大などです。おかしなことですが、一般入試に向けての準備が大変であるうえAO入試等も少ない国公立大が日本の高校に編入した帰国生の受験を認めない(つまり実質的にこうした帰国生は最初から機会が奪われている)傾向にあり、外国語と現代文さえ出来れば一般入試でもかなり勝負できるうえAO入試等の多様な入試機会を持っている私大は、大半が日本の高校に編入した帰国生の受験を認めています。
日本の高校への編入時期は、高2の2学期以降であれば認める大学が多く、高2の初めからでもよいのは東京学芸大、広島大総合人間科学部、桜美林大、聖心女子大、玉川大、中央大、東洋大、法政大、明治大法学部・国際日本学部、立教大、京都外語大、立命館大などです。高1途中でもよいのは学習院大文学部、ICU、上智大(通算3年以上の滞在の場合)であり、逆に高3編入でなければいけないのは埼玉大、横浜国大教育人間科学部(国際共生社会課程を除く)・経営学部、金沢大、名古屋大法学部、京都大経済学部などです。


5.海外への渡航は親の仕事など自己都合以外の理由か
これについては、渡航時だけでなく、渡航後も高校卒業まで親に帯同する形であったか(途中で親が日本に帰任していないか)も問われることがあります。
渡航理由が自己都合以外であることを求めるのは、お茶の水女子大、東京学芸大、一橋大(ただし2006年10月1日以前の単身留学は認めます)、青山学院大文学部・経済学部・国際政経学部・理工学部、日本大などです。
親の帰任後の海外滞在期間について問うのは、1年未満とするのが秋田大、東京農工大、愛知教育大などで、1年以内とするのが兵庫県立大経営学部で、2年以内とするのが東京学芸大(親との同伴が1年以上ある場合)、佐賀大医学部などです。ただし、受験生の履歴を見て検討というケースもありますので、渡航理由とは別の事情で海外に残った場合は注意が必要です。


6.どのような学習上の成果を持っているか 大雑把な表現をしましたが、具体的には高校が属する制度で大学入学資格を得たかという点と、外国語力がどの程度ついているかという点が受験資格として問題になります。
前者については、横浜国大経済学部、浜松医科大、慶應大、ICU、法政大、早稲田大などが必要ですが、それ以外でも書類選考がある場合(受験資格の確認という程度の書類選考でなく、不合格者が何人も出る書類選考の場合)や最終合否に書類内容が大きく影響する場合は、この資格を満たしていないと実質的には合格できないということになります。たとえば北海道大、東京外語大、東京大、京都大などです。
後者については、横浜市大(TOEFLまたはTOEICのみ)、学習院大経済学部(TOEFLのみ)、ICU(TOEFLまたはTOEICのみ)、上智大、聖心女子大(TOEFLのみ)、明治大などが、受験資格として(横浜市大、上智大)、または外国語筆記試験の代用として必要とします。


7.高校卒業から大学入学までどれくらいの期間が経つか
2年以内というのが大半の大学の規定ですが、日本の高校に編入した場合は高校卒業見込みでの受験しか認めないところがほとんどです。海外の高校の卒業の場合に、1年以内(受験する年度の4月1日以降の卒業)という条件を出しているのは東北大、筑波大、名古屋大、青山学院大、中央大、立教大などです。
逆に、2年以上経過しても受験できる大学は、桜美林大、慶応大文学部・経済学部・商学部・総合政策学部・環境情報学部、上智大(海外での在籍期間と海外の学校からの離籍期間による)、フェリス女学院大(出願までの経過期間が海外での在学期間を超えなければよい)、南山大(3年未満)などです。


8.6歳からの12年間の教育課程を飛び級などで早く修了しているか
これに関しては、早く修了したのでない場合には問題になりませんが、早い場合は大学入学時(4月1日)に18歳になっているかどうかを問われるのが一般的です。飛び級は大学入学時に18歳になっている場合のみ認める、という大学が大半で、その点について明示していない大学もまずはその受験生の履歴により検討ということになります。可能性のある人は早めに大学に打診してください。


以上の7点が帰国生用の入試で問題となる条件ですが、始めに述べた通り帰国生に限定しないAO入試や自己推薦入試、または秋入学用の入試(慶應大法学部・総合政策学部・環境情報学部のように4月入学の帰国生用の選考と一緒に行う場合は別です)には関係ありません。逆に言えば、上記の条件に合わない点が多い人はまずAO入試等を考えてみましょう。
念のためそうしたAO入試の代表的なものに触れておきますと、上智大国際教養学部、早稲田大国際教養学部がそうで、帰国生用の入試はなく、学部独自の入試で外国人と一緒に帰国生も受け入れています。一方、慶應大法学部・総合政策学部・環境情報学部や早稲田大政治経済学部のように、帰国生用の入試もあるが、AO入試も実施しているというところもあります。



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