北半球の高校生の受験準備に関してvol.16 ―帰国生大学入試についてvol.158―

(2013年2月21日 19:45)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、治安が良くないといった理由で滞在している地域の社会と関わりを持つことができない場合に、どのようにしてその政治的・経済的・文化的特徴や人々の持つ価値観への理解を深めることができるかということを検討しました。このような事柄に関して自分なりの考えを持つことは帰国生入試やAO入試を受験する上で必要不可欠なことですので、それが困難な状況に置かれている人には、上の記事で述べたような取り組みをしてもらえればと思います。


さて、先日、SOLの教室から自宅への帰る際にラジオを聞いていたら、ある番組で大学を中退する人が増加している現状に対して大学側が様々な対策を講じているという特集を放送していました。この問題は社会的評価が低い大学において深刻なものになっているようですが、ある論者によれば早稲田大学や慶應義塾大学でも1学年で5%程度の学生が大学生活を途中で打ち切ることを選択しているそうです。いかに一般的に高く評価される大学に通っていても退学してしまえば高校卒業が最終学歴になるので、現在の厳しい経済状況の下では安定的な職業に就職できる可能性が低下するなどの好ましくない影響が個人の生活や社会に及ぶことが予測されます。


この問題に関して書かれた論考を読むと、実践型の授業が少なく大学で学んでいることと自分が描いている将来像の間のつながりが見えないことや、大人数で行われる授業が見られる一方で一人一人の学生をサポートする体制が整っていないことなど、大学で実施されている教育の問題点が挙げられることが多いようです。これらの指摘は重要なものであることは確かですが、受験生の中に自分の関心や学問的適性を確認したり、大学の各学部・学科で研究されている学問がどのようなものであるかということに対する理解を深めたりする機会に恵まれていない人が少なからずいて、大学に入学した後にこれらの点に関して抱いていたイメージと実態の間のズレが明らかになるということもあるのではないかと思います。


海外の教育制度では、高校において大学で学ぶ学問の初歩的な内容を扱う授業があり、帰国生や海外生は日本の教育制度においてのみ学習をしてきた人に比較して、上で述べたような問題を回避できる可能性が高いということは以前にも説明しましたが、社会的な活動に参加することもこの点で大きな意義を持つものです。そのような経験を蓄積することによって、自分が強い関心を持つことのできる社会問題や様々な事象に対する考察を行なう際に抵抗感を感じることのない切り口とはどのようなものであるかということを深く追究することができるようになります。また、それを自分でできない場合でも、小論文の授業を担当する教師が進路指導を行なうSOLのような環境では、社会的活動に参加した体験やそこで得た感触を教師と共有することによって、自分の学問的適性や将来像のあり方について正確な評価をしてもらえる見込みが高まることが考えられます。海外の高校で学んでいる人には、日本の大学に進学するか否かに関わらず、このような機会を最大限に活かすようにしてください。


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