北半球の高校生の受験準備に関してvol.33 ―帰国生大学入試についてvol.175―

(2013年5月27日 19:50)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、英語圏の国々の教育制度(IB Diplomaコースを含む)で学ぶ中で英語運用能力を順調に伸ばすことができなかった場合、高校を卒業した後に日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験準備を行う環境を選ぶ際に注意すべき点があるということを述べました。授業を受ける人の多い予備校や塾では学力を判断基準とするクラス分けがなされるのが一般的ですが、下位のクラスに入った人に十分な学習の機会が与えられないというのはよく耳にする話で、受験生活をより充実したいものにしたいと考えているのであれば、このような学習環境は避けた方がよいと思います。


さて、本格的な受験準備のための環境の選択に当たっては、他にも注意すべき点があります。帰国生入試やAO入試は一般入試と比較して、出願資格認定のための条件に統一された形が存在しませんし、大学や学部・学科によって実施しているところとそうでないところがあったり、ある大学の一つの学部で複数の特別入試を同時に行なっていたりと、受験生にとって合格可能性だけでなく、そもそも自分はどのような大学を受験できるのかがわかりにくいものです。そのため、受験校の選定には、このような入試制度を持つ大学について幅広い知識を持ち、小論文の授業を担当するなどの形で英語運用能力以外に一人一人の生徒が持つ様々な能力や体験のあり方を理解している人にサポートを受けることが、上のような学力の状況にある人にとっては特に重要なことになります。


しかし、大手の予備校や塾に通った経験のある人から、学力が高くないと評価された人が充実した進路指導を受けることができるのかという点に関して、強い疑問の念を抱かざるを得ない話を聞くことは珍しくありません。例えば、最終学年の途中である予備校で講習を受けた人が僕らの教室を訪ねてくれた時に、進路に関する相談の中で大学入学資格を取得できず高校卒業資格しか取得できない場合に受験できる大学はあるのか尋ねたところ、相談に対応することを専門的な職分だと自己紹介したスタッフから「自分にはよくわからないので、資料集を用いて個人で調べてください」と言われたという話をしてくれたことがあります(これが生徒の自立を促す目的で行なわれたのであれば十分な教育的配慮があったと考えることができますが、この担当者からはそのようなものは感じられなかったということですし、そもそもその資料集ではそれは調べられません)。


また、生徒の指導やサポートを分業制で行なうのが規模の大きい学習環境では一般的なようですが、そこでは進路指導を担当するスタッフが各大学の合格者が持つ学力の全体像を把握していないために、合格可能性を高く望めない大学の受験を勧めたり、前年度の受験者と合格者の比率から難易度を判断したりする(帰国生入試において合格倍率が一年ごとに上下する傾向が確認できる学部や学科があることの理由の一端はここにあるのだと推測できます)こともあるようです。このような形で行なわれる進路指導では、英語運用能力が比較的低い状態で日本に帰国してきた人にとって最適な進学先を見つけることは難しいと思われますので、自分が受験準備を行う環境として選択しようとしているところでしっかりしたサポートを受けることができるのかを、以前にそこで授業を受けた体験がある人などに確認するようにしてください。


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