2015年度帰国生大学受験セミナーの現場から見えたことvol. 8―帰国生大学入試についてvol. 236―

(2016年6月10日 16:00)

こんにちは。SOLの余語です。
「帰国生大学入試についてvol. 235」では、知的な関心やそれが支える学習意欲について、自分の体験とは直接的な関わりがないことの多い問題にまで十分に対象範囲が広がっていないことが多く見られようになり、それは以前から言われているような家庭が置かれている状況という視点だけでは説明できないということを述べました。このような状況を受けて、社会的な規模の変化から子どもの知的な関心や学習意欲に関する問題を読み解こうとする試みが出て来ており、前回紹介した内田氏の主張など、傾聴すべき考えが提示されるようになっています。

さて、ここ2、30年間の社会的な変化の中で、最も著しく、誰にとっても身近なものは情報環境に関するものだと思います。僕が大学に入学した20年ほど前にはパソコンがある家庭は少なく、インターネットのコンテンツも掲示板程度のものがほとんどで、現在ほど充実したものではありませんでした。しかし、その後、パソコンが家庭どころか個人に一台というほどに広く普及しただけでなく、携帯電話のような通信機器も同様の機能を持つようになりました。また、テレビのようなマスメディアでは入手することができないような分野の情報を発信するものから、個人間のコミュニケーションで用いられるものまで、インターネット上ではその全容を把握しきれないほどの多種多様なコンテンツが展開され、いつでも自分が好む情報を入手したり知人と連絡を取ったりすることが可能です。

このように情報環境が充実したものになったことの影響は様々なものが多くの人によって指摘されており、それらは個人の生活にとって好ましいものもあれば、そうでないもあるという印象があります。知的関心や学習という文脈では、一人一人の学習者が自分の関心に従って主体的に学ぶサポートしてくれるという面に焦点が当たることが多いように思われる一方で、最近では携帯電話といういつでも身近に置いている通信機器でもインターネットにアクセスできるようになったことで、子どもの睡眠時間が不安定なものになりそれが身体や精神面の健康状態に悪影響を及ぼしていることや、インターネット中毒になる十代の人が急増していること(朝日新聞によれば、専門の診療科を設置する病院もあるそうです)が指摘されるのが目立つようになりました。

僕らがスマートフォンやパソコンを使っている生徒を見て感じるのは、知的な好奇心が引き出されるための貴重な時間が情報機器によって奪われているということです。知的な関心は、人間の思考や行動、社会的な問題に対しての疑問とそれを解消しなければならないという強い気持ちがその核となります。確かに、インターネットは様々な疑問に対しての答え(社会的に認められている学者などが書いた本が提供してくれるものに比較すると、価値が低いものである場合が大半ですが)を提供してくれますが、疑問を持つためには、周りの人のサポートや刺激が与えられることと同時に、対象となる問題は自分がこれまで考えてきたり経験したりしたことと整合的なものと言えるのかということを検討する時間が必要です。また、社会問題などについて自分が抱いた疑問を何らかの形で答えを得なければならない自分にとって身近なものと捉えるようになるには、その答えについて「ああでもない、こうでもない」と自分なりに考察するプロセスが不可欠で、それにも一定の時間がかかります。

この点、インターネットであるサイトを見た時に、そこにあったリンクから自分の目にとまった他のコンテンツに移っていくということを繰り返して何時間も経ってしまったということは多くの人が経験していることだと思います。それに加えて、最近はLineやFacebookのメッセンジャーのように簡略な文などの形ですぐにコミュニケーションを取れるアプリケーションを利用するのが一般的になっており、SOLの教室でもひっきりなしに着信していることを伝えてくる携帯電話を目にすることが少なくありませんし、自分に来る連絡に対応することによって徒に時間を消費してしまう人もいます(「勉強している間、携帯電話を預かってください」と言われて、僕のキャビネットに保管したこともよくあります)。

情報機器やインターネットの普及は我々に大きな恩恵をもたらしたことは事実ですが、それと同時に、子どもから知的な関心を引き出すのに必要な時間を奪ってしまうという側面は無視できない問題だと思います。そして、この現象が及ぼす悪影響には他の側面もあると僕は考えており、次回の記事ではそれを取り上げたいと思います。

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