ここ2、3年で見られた帰国生の大学受験における変化について(4) ―帰国生大学入試についてvol. 243―

(2019年5月8日 17:35)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、現在、日本では地方創生政策の一環で大都市圏の私立大学に入学者数に関する制限が課されており、少なくとも帰国生が受験できるAO入試や自己推薦入試で大学が受け入れる学生の数に影響があったようだということをお知らせしました。英語運用能力試験の高いスコアを持ちながら、早稲田大学政治経済学部のグローバル入試で不合格という結果に終わった人が増えたにもかかわらず、その後に入試のある大学の合格者数が思ったより増えなかったり、以前と変わらなかったりしたことが経済学部や商学部といった社会科学系の学部で学びたいと考えている人の受験を厳しいものにしています。

そして、上で述べた入学者数に関する制限の影響が明らかになるにつれて、日本の高校の大学受験の指導に関する姿勢にも変化が見られるようになりました。これまで日本の高校は、中学・高校入試で帰国生を対象としたものを実施しているところでも、海外での滞在経験がある、もしくは英語運用能力試験で一定の結果を得ている生徒が大学の特別入試を受験する際に十分なサポート体制が整っていないだけでなく、一般入試を受験するよう指導するなど、明らかに消極的な姿勢を示すということが少なくありませんでした。

これは、そのような高校の教師の多くが一般入試で大学に入学しており、特別入試で合格するのに必要なものがよく分からないということが背景にあると考えられます。また、帰国生入試やAO入試、自己推薦入試などは出願資格を得るための条件や試験科目などが大学や学部、入試制度によって様々であり、教師としての日常業務をこなしながら十分に情報を収集することができないために、特別入試の受験を希望する人に対して正しい進路指導をする自信を持てないということもあるでしょう。

しかし、大都市圏の私立大学で一般入試の合格者数が絞り込まれた結果、進学を希望している大学に合格できなかった、またそもそも入学できる大学がないという生徒が増えました。そのため、AO入試や自己推薦入試であっても、受験できるものがあれば積極的に勧めていくというように進路指導のあり方を変えている高校が出て来ているようです。例えば、朝日新聞2019年4月8日朝刊に掲載された「私大入試混乱 首都圏 合格者絞り込み データ通用せず」という記事では、「今後は…推薦・AO入試の指導を強化する方針を決め、具体策の検討を始めた」という東京都内の私立中高一貫校の教頭のコメントが紹介されています。

このような方針転換は、今後、AO入試や自己推薦入試だけでなく、出願資格が認められる場合には、帰国生入試を受験する日本の高校生が増加することにつながると予想されます。そして、それによって、日本の大学の入試を受験する帰国生の状況がより厳しいものになる可能性が生じているのです。

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