東京外国語大学の帰国生等特別推薦選抜について ―帰国生大学入試についてvol. 285―

(2021年1月29日 12:35)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、首都圏の国立大学の特別入試の中で最も早い時期に実施されるものの一つである横浜国立大学経営学部の帰国生徒選抜を紹介しました。この入試は小論文試験と面接試験の出来だけで合否が判定されますので、非英語圏の高校を卒業した人でも受験ができますし、今年から単身留学生にも出願資格を与えるようになった一方で、合格者の数を絞る傾向が見られますので、受験を考えている人は2つの試験に向けた準備を入念に行うようにしましょう。

さて、今回は横浜国立大学の帰国生を対象とした入試と同様に、例年12月の初めに入試日が設定されている東京外国語大学の帰国生等特別推薦選抜を取り上げたいと思います。知っている人も多いかと思いますが、この大学は言語研究や言語教育といった分野における日本の中核的な大学で、言語文化学部では英語やヨーロッパの国々の言語だけでなく、世界中の様々な地域の言語やそれらが使われている社会の文化を学ぶことができます。また、国際社会科学部という各国の政治や経済に関わる問題に焦点を当てた学部や、今後多文化化するであろう日本社会において活動するのに必要なものを学ぶことができる国際日本学部もありますので、上智大学外国語学部や青山学院大学文学部英米文学科といった外国語を学ぶところを受験する人に加えて、青山学院大学国際政治経済学部のように国際政治や国際経済に関する問題について学びたい人も受験候補に入れるのがよいと思います。

この入試は日本の高校に編入した人でも海外の教育機関に高校での2学年を含めて3学年継続して在籍していれば出願資格を得られるということが特徴の一つですが、合否判定のプロセスは2つの段階で構成されています。

1つ目の段階は書類審査で、ここでは英語圏の国やIB Diplomaコースのカリキュラムを採用する中等教育機関で5学年以上学んだ場合を除いた全ての受験生に大学が指定するTOEFL iBTやIELTSなどの英語運用能力試験の成績を求めています。様々な外国語を教えることのできる教員がいる上に、この入試を実施する目的を「多様性を確保する」こととしているのに、なぜ英語に限定した形で外国語運用能力試験について考えるのかは理解に苦しむところですが、非英語圏の現地校で学んでいる人もその環境の中でできる限り高い成績を取るように努力した方がいいでしょう。また、上で述べた条件で例外的な扱いを受けるケースでも、高校の採用している教育制度における大学入学資格を取得するための統一試験の成績を提出することが望ましいとされていますので、一般的に高い水準とされるラインを超えられるようにそのような試験に向けた準備をしたり日々の高校での学習に取り組んだりすべきだと思います。

第2次審査では小論文試験や面接試験が行われますが、この大学のように外国語を学ぶことが主たる存在意義になっているところでは、多くの日本人にとって外国語学習の基盤となる日本語運用能力が重視されるということが多くありますので、小論文試験に向けた対策を入念に行うのが望ましいと言えます。この点、国際社会科学部では例年、事前に課題図書が入試要項で発表され(ジョージ・オーウェルの本が今年も指定されたようですが、これは世界的に資本主義が行き詰まりを見せる中で社会主義に対する期待を示す人が増えているということが背景にあるのかもしれません)、その内容に関する問題が出題されます。SOLの帰国生大学受験セミナーでは、生徒に本を読んでもらった上で、僕か前島が作成した予想問題に数多く取り組んでもらうという形で受験準備を進めていますが、受験を考えている人はこのような柔軟な対応ができる学習環境を見つけるのがよいと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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