社会的な活動への参加について (6) ―帰国生大学入試についてvol. 368―

(2023年6月10日 18:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、社会的な問題の解決に貢献するようなボランティア活動などに参加することが帰国生入試やAO入試でどのような学部・学科を受験するかを決めるのにつながることがあるという話をしました。当事者やその周辺にいる人々の話を聞くことによって活動範囲が大人に比べて狭い18、19歳の人が感じる社会問題との距離感が縮まることがその背景にあるのではないかと考えています。

ここ2回の記事では「社会的な活動に参加することによって大学で学ぶたいと思うものが明確になり、受験に向けた準備に対する意欲が強いものになることがある」ということを述べてきました。その際、根拠となるものがこの教室で今まで授業を受けてきた人の様子だけだったため、それにあまり説得力が感じられないという印象を持った人も少なくないかもしれません。

この点、欧州圏の国々には大学の進学をいつするのかについて日本で一般的に想定されているものと異なる考え方を持つ社会があります。例えば、社会保障制度や教育制度に関して日本社会が見習うべきことが多いと主張されることがあるスウェーデンでは、高校卒業後1年以内に大学に進学する人は全体の20%、3年以内が40%、5年以内で50%超となっており、大学入学者の25%が25歳で大学生の平均年齢が29.1歳というデータもあります(日本では大学入学者の約80%が18歳で、約16%が19歳とされています)。

そして、高校を卒業した直後に大学に進学しない場合には、イギリスやカナダの教育制度で学ぶ人のようにギャップ・イヤーを取ることもあるようですが、全体の半数は保護者から経済的に自立するために労働市場に入るとされています。そこで社会的な経験をある程度蓄積した後に大学に入学する人が多いのには、国際経済における競争が激しくなる中でスウェーデンにおける主要産業が大きく変化するのに個人が対応するために大学で学び直す機会を提供する必要があったことが関係していると考えられますが、教育制度全体において授業を受ける人の主体性が重視されており、大学は企業などで実際に働いてみたり様々な活動に参加してみたりすることを通じて学びたいことが明確になった時点で入るものであるという社会的な合意が存在するという分析も見られます。

このような考え方は北欧諸国で広く共有されているようで、僕の知り合いのデンマーク人も、大学は20代中盤から後半にかけて入学するものであり、それまでに蓄積した社会的な体験の中から学びたいことを考えるのが一般的であるという話をしていました。彼ら/彼女らの認識を踏まえても、少なくとも法学や経済学、政治学といった社会科学系の学問を扱う学部・学科を受験する可能性があると思う人は、何を学ぶのかについて自分なりの考えを持つために、また受験準備を行う意欲を強いものにするために社会的な活動に参加するのが望ましいのではないかと思います(日本でも大学入学や就職に関する人々の認識や慣行が変わるのであれば話は別ということになりますが、近い将来にそのようなことが起こる可能性はあまりないのではないかと考えています)。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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