社会的な活動への参加について (7) ―帰国生大学入試についてvol. 369―

(2023年6月16日 18:30)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、スウェーデンやデンマークといったヨーロッパの国々で大学に進学する人の平均年齢が日本よりも高い背景に教育制度において学ぶ人の自主性が重視されており、大学は社会的な体験を蓄積することを通じて学びたいと思うことが明確になった時に入学するものであるという社会的な合意があるという話をしました。このようなことを考えても帰国生入試やAO入試においてどの学部・学科を受験するかを決める前に社会的な活動に参加することには意味がありそうです。

さて、今年度、帰国生入試やAO入試を受験する予定の人の中には、大学のホームページに公表される入試要項を中心に、出願手続き時に提出が求められている書類についての確認を始めた人がいるかと思います(僕らがIELTSの対策のサポートをオンラインで行っている人とも授業でそのような話をすることが増えました)。特に高校に作成を依頼する必要があるものについては、北半球の高校を卒業する場合には、日本に本帰国する前に受験する大学や学部・学科のものを揃えておくべき(多くの大学で出願手続きがある期間と高校の夏休みが重なってしまうことを考えると、その必要性は高いと言えます)なので、そのようなプロセスをできるだけ早く進めることは望ましいことだと言えるでしょう。

帰国生入試やAO入試では、上で述べたようなものの他に、受験生が自ら作成しなければならない書類がいくつかありますが、その中にはある大学や学部・学科でなぜ学びたいのかを800字程度で説明する志望理由書が含まれるのが通常で、書類審査で不合格者が出るいくつかの入試を除いて、面接試験において試験官が質問を考えるための材料の一つとして用いられます。この書類については、内容としてどのようなものが適当かについて疑問を持つ人が多いようで、インターネットで様々な情報が見られますし、作成のサポートをしている塾なども年々増えているような印象があります(この教室の帰国生大学受験セミナーでどのようなサポートを行っているかについては「SOLからのお知らせvol. 300」を確認してもらえればと思います)。

志望理由書の作成に関して注意すべき点の一つは、その内容が18、19歳の人が受験している学部・学科で扱われている学問を学びたいと考える動機として自然なものであると試験官が評価するようなものになっていることです。例えば、インターネットで見られる情報の中には、自分が持っている能力をアピールするために、受験する学部・学科に所属する研究者が書いた専門書を(この年齢層の人には理解するのが難しいものであったとしても)何冊も読んでおり、その過程でそこへの入学を志望するようになったという話の流れが望ましいとするものがありますが、そのようなものを読んだ試験官は彼ら/彼女らが感じた「不自然さ」(塾などで大人から何らかのサポートを受けたのではないかという疑念と言ってもいいかもしれません)から、受験生が専門書の内容を正しく把握しているのかを確認しようと厳しい質問を多く投げかけることになりますし、それに焦った受験生が普通の精神状態であれば適切に答えられるはずの質問にネガティブな評価をされるような対応をしてしまうといったことも起こります。

この点、これまでに法学や経済学、政治学といった社会科学系の学問が専門領域となっている学部・学科を受験した生徒の試験会場での様子を聞く限り、社会的な活動に参加する中でそこで注目を集めている問題の重大性に気付くことができたということを説明した後に、その解決のために何をどのような形で学びたいのかを説明するという展開になっているものは、大学の教員から自然なものと捉えられることが多いようで、厳しい質問で攻め立てられたという話はあまり聞きません。それを踏まえても、帰国生入試やAO入試を受験する場合に、社会的な活動に参加した体験があることには意味があると思われます。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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