海外の大学への進学について(3) ―帰国生大学入試についてvol. 374―

(2023年11月18日 15:30)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、海外の大学への進学について考える際に視野に含めるべき社会の変化の一つとして、日本の企業の中で新卒採用をいわゆる「高度人材」に絞っていく動きが広がっていくのではないかと言われていることを挙げました。これが事実であれば、少なくとも経済的に安定した生活を送るためには、大学で専門的な知識や考え方、技能をある程度習得しておく、もしくは将来的にそれを身に付けるための素養を獲得することが重要になると言えるでしょう。

ここ数年、人々の働き方に関わる問題として大きな注目を集めるものは他にもありますが、その一つに日本の企業の中に「ジョブ型雇用」と呼ばれる雇用形態を導入することに積極的な姿勢を見せているところがあることがあります。「ジョブ型雇用」は欧米の先進国で広く見られる雇用のあり方で、企業が事前に労働者が果たすべき職務の範囲を「職務記述書(ジョブディスクリプション)」という形で定めた上で、収入についても同じ地域で同じ仕事をしている人のものの水準を参考に決定し、一人ひとりの労働者と労働契約を締結するというものとされています。

日本では、これまで社会の経済動向や各企業の経営状況などに基づいて個人の職務を変化させながら終身雇用を保証する「メンバーシップ型雇用」が大手の企業で働く人を中心に一般的なものとされてきました。それに対して、「ジョブ型雇用」では指定された職務に関係する専門性を身に付けていることが労働者に求められる上に、より条件のいい他の企業への転職が現在よりも容易になるというメリットがある一方で、職務を十分に果たしていないと企業に判断されたり、働いている部署が何らかの理由でなくなってしまったりした時に失業してしまう可能性があると言われています。

日本経済団体連合会(経団連)が2020年に公表した報告書で、「メンバーシップ型雇用」のメリットを活かしながら適宜「ジョブ型雇用」を取り入れていくべきという立場を取ったところから、この形態を望ましい雇用のあり方と評価する企業が増え、(欧米社会でのものとは若干の違いがあるものの)すでに導入している企業もあるようです。このような動きの背景には、コロナ禍において在宅勤務やテレワークが社会に浸透する中で労働者が十分に業務を行っているかを企業が判断することが難しくなったこと、社会状況などの変化により働き方に関して人々が多様な考えを持つようになったことなどがあるとする記事をインターネット上でよく見かけます。

確かに、このような事情が「ジョブ型雇用」の導入を促す要因になりえることは理解できるのですが、2000年代の初めに非正規雇用の対象となるものが拡大した際にも「働き方に関する多様な考え方を保障する」という話が出ていたことなどを踏まえると、実際には前回の記事でもふれた企業間の国際競争が激しくなったことが主な理由で、日本の企業に経済的な余裕が依然と比べてなくなってきたことが大きいのではないかと思われます。「ジョブ型雇用」にすれば従来よりも社員教育にコストを割かなくても済みますし、景気の変動や企業の経営状況に従って雇用者数を増減させることが容易になります。今後はその爆発的な拡大によって経済成長を支えてきた人口のサイズが大幅に縮小することが見込まれるため、「ジョブ型雇用」の導入を検討する企業が増えていくことが考えられます。

日本の企業は新卒採用する際に大学の名前のみに注目する傾向があったのには、「メンバーシップ型雇用」と充実した社員教育プログラムの存在が関係しています。このような前提が崩れた際には、就職希望者に専門性が要求されるはずであり、大学で少なくともそのようなものを身に付けるための素養を獲得することが重要になってくるのではないかと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
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