海外の大学への進学について(8) ―帰国生大学入試についてvol. 379―

(2024年3月9日 16:45)

こんにちは。SOLの余語です。
前回までの記事では、現代社会がこれまでに経験したことのない大きな変化が今後数多く見られるようになるだろうと言われていることや、その中で満足度の高い生活を送っていくために自分なりに「没頭できるもの」を見つけておくことが重要であることを踏まえると、一定程度の専門性を身に付けることを目標に4年間の大学生活を送ることが望ましいという話をしてきました。そのためにどのような環境を選択すべきなのかについて、これから大学進学を予定している人は慎重に検討すべきです。

海外の高校で学んでいる、もしくは現在日本の高校に在籍しているが以前に海外の教育機関に在籍した経験がある人の中では、英語圏の大学で学ぶことを視野に入れている人が増えているようです。僕らがその理由としてよく聞くものには、以前の記事でも紹介したように、英語で学問を学んだ方が将来の選択肢を増やすことができると周りの大人から言われるということに加えて、海外の大学の方が一つの授業に参加する人の数が限定されており、教員との距離が近い、または教員や他の学生との双方向的なコミュニケーションが期待できる(学生の多い有名大学の授業は日本で行われているものとほぼ変わらないようですが)、日本の大学よりも多様な人と出会う機会を確保できるといったものがあります。また、課題などが多く出される厳しい状況に身を置くことで成長したいと考えている人もいるでしょう。

これらの考えには一定の説得力が伴っているように思われますが、専門的な思考や知識を定着させることが大学に進学する目的である場合に、最も重視しなければならないのが「どのような言語が主に使用されている環境なのか」という点です。僕がこのような立場を取るのは、日本でよく見られる文系や理系といった学部・学科の分類に関係なく、全ての学問分野において専門性を身に付けるのに必要なもののほとんどは言語によって伝達されるからです。そして、学習者には一つひとつの単語の内容や複数のものが1つのユニットになった文の内容をしっかりと把握した上で、それぞれの関係性を正しく整理しながらそれらに対する理解を蓄積していくことが求められます。

最近、僕は生徒からの勧めで『The Big Bang Theory』という2000年代中盤から2010年代後半までアメリカで高い人気を誇っていたとされるコメディー・ドラマ(僕はこの時期、アメリカのスポーツばかり見ていたので、事実かどうかは分かりません)を見ているのですが、この作品はカリフォルニアの有名な工科大学に勤務する研究者や技師と高校を卒業した後にすぐロスアンゼルス近郊の町にやって来た女優になることを目指している女性の交流が各エピソードの軸になっています。そして、そのような交流が発展していく中でよく目にするのが、研究者や技師が専門領域としている物理学などのトピックについて専門的な用語を数多く用いながら議論するシーンであり、またそこで用いられる単語や表現が全く理解できない女性が「何も理解できない」という表情を浮かべたり的外れな発言をしたりするシーンです。

日本でも大学の生活協同組合が運営する教科書を販売しているスペースなどに行くと、物理学を学んでいる人のためのテキストとして文章による説明が主な構成要素となっているものを目にするので当たり前のことだと思う人もいるかもしれませんが、物理学のように理系の学問の代表格と考えられているものでも、専門的な理解を深めるには言語で伝えられる情報をどれだけ吸収できるかが重要であるようです。次回の記事でもこの点について考えるための材料を提供できればと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

トップへ戻る