受験する大学や学部・学科の選び方について(4) ―帰国生大学入試についてvol. 249―

(2020年5月19日 20:00)

こんにちは。SOLの余語です。
前回の記事では、日本の大学の帰国生入試やAO入試においてより良い成果を上げるためには、「どの学部・学科で何を学びたいか」ということをしっかりと考えるべきだということを述べました。これらの入試は志望理由書の提出や小論文試験、面接試験の受験を求めることを特徴としており、特に受験生が多く集まる首都圏の大学や学部・学科を受験する場合には、自分の学問的な関心や興味を深めることが合格可能性を高めるには必要不可欠です。

さて、ここ数年、日本の大学入試で経済学や経営学、政治学といった社会科学系の分野を扱う学部・学科の人気が高まっていることをこのブログで何度か取り上げてきました。その背景には、それらの学部・学科で学べることが一般的な企業活動に貢献するのにつながる可能性が高いものであるため、将来の就職活動で有利な立場に立てるという考え方を持つ人が社会の中で増えていることがあるようです。

確かに、自分が社会に出た時にどのような仕事をしたいかということを様々な形で情報を集めながら考えるのは、受験する大学や学部・学科を絞り込む際に有用な方法の一つです。しかし、将来の生活のあり方に対する自分なりの検討がないままに、就職するのがどのような業界であろうと社会科学系の学問を学んでおいた方が有利であるという考え方にただ従う形で入学を希望する学部・学科を決めてしまうことの是非については考えるべきなのではないかと思います。

そのように考える理由には、これまで2回の記事で述べた、大学生活には物事を考える姿勢や方法を身につけるという重要な側面があることなどがあります。それに加えて、上のような社会で広く受け入れられているとされる考えを無批判に受け入れてしまうことによって、大学受験を自分にとって重大な意味を持たない「他人事」のようなものとして捉えるようになり、その準備を行う過程の全てに真剣に向き合おうという気持ちが弱いものになるという事態が生じる可能性についても指摘しておかなければなりません。

どのような大学に入るかは受験生の将来にとって重要な意味を持つため、それが「他人事」のようなものになることはないのではないかと考える人もいるかもしれませんが、現代の日本ではある水準以上の所得がある家庭であれば、大学に進学することは当たり前のことであると考えるのが一般的ですし、デンマークやスウェーデンのように一定の社会経験を蓄積した20代中盤以降に大学に初めて入学する人が多いという社会状況でもありません。このような環境において、「大学で何を学びたいのか」ということを受験生自らが考えるということがなければ、18、19歳という年齢の人の中に大学受験が「自分自身の問題」であるという実感を持てない人がいてもおかしくはないでしょうし、我々の生徒から聞く周りにいた同年代の人の話からすると実際にそのような人は多くいるようです。

SOLにも、教室に通い始めた時期に大学受験を「自分自身の問題」と捉えられない生徒はおり(男子生徒に多いという印象が強いです)、このような状態にある間は、元々の学力が高い場合でも、受験準備のあらゆる局面で「詰めの甘さ」が見られます。例えば、我々は小論文の授業で出題したトピックについて理解できないことがあれば授業時間外に質問するように言っているのですが(時間割も2人の教師のうちどちらかが授業をしていれば、もう片方はできるだけ質問を受け付けられるようにするという形で組んでいます)、積極的に行動に移すということはなかなか見られませんし、一度提出した答案を教師からのコメントを受けて書き直すことなどにも同じことが言えます。

また、SOLでは大学入試の本番の日に十分に能力を発揮できるように、そして日々の学習を実りあるものにするために「早寝早起き」といった生活習慣を定着させることの重要性について話すことがあります。しかし、大学受験が「他人事」のようなものになっている段階では、朝に二度寝をしてしまったりスマートフォンを見ているうちに寝るのが夜遅くなってしまったりと理想的な生活リズムを確立するのが難しいというケースが見られます。

このように、受験準備のプロセスを充実したものにするためには大学受験が「自分自身の問題」であるという強い実感を持つことが必要不可欠ですが、そのような意識を持つためには、「社会科学系の学部に行った方が就職活動に有利な立場で臨める」といった社会で一般的に受け入れられているとされる考えを盲目的に受け入れるのではなく、「自分の学びたいこと」を真剣に考える機会を持つことが重要だと言えるのだと思います。

それでは、日本の大学の帰国生入試やAO入試の受験に関してご質問などがありましたら、以下のフォームからご連絡いただくか、info@schoolofliteracy.comにメールをお送りいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【教育相談フォーム】
https://www.schoolofliteracy.com/consultation/form.html

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